なつ、ナツ、夏 ページ30
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夏といえば祭り、海、プール、そしてビキニ。
『頭の中真っピンクじゃん……』
「なんてこと言うのよ」
男は何歳になったってそういうもんだぞ。Aに念を送る。
「お願い。1回でいいから着てよ！」
俺達は目立つ仕事をしているが故に大まっぴらなデートができない。本当は一緒に花火大会や祭りに行きたいし、海や川、プールで遊びたい。でもそれができないのがこの仕事の辛いところだ。
同性とならまだしも、異性とは良からぬ噂を立てられる。
『絶対やだ』
「なんで写真集に載せれて俺の前では嫌がるんだよっ！」
だから家の中で……と思うのだけど、Aに嫌がられる。家で手っ取り早く夏気分を味わうなら水着だと思うのだけど、Aは水着を着てくれない。
『襲われるに決まってるからでしょ！ あれから猛省したんだから』
Aは鼻息荒くふん、とむくれる。Aの言う“あれ”はセクシーなレオタードに身を包んで出迎えてくれた日のことだ。俺はお手柔らかに、優しくして、という訴えをまるっきり忘れてテンションが上がっていた。
『辰哉が反省してたらと思ったけど、そうでもなさそうね』
「したよ！ してたじゃん！」
その結果、快楽に関して経験が浅いAにハードなプレイで何度も絶頂させ、終わった頃には半泣きで声も枯れてしまっていた。反省どころか猛省するくらいに辛かったらしく、しばらく胸を触ることさえ許されていない。
『本当にしてたら自分からしたなんて言いませんっ』
俺の趣味趣向関係なく楽だから、と履いていたショートパンツも控えるようになった。
そもそも脚さえ見せてくれない。最近はワイドやジョガーのような脚を覆い隠すパンツ、ロングワンピースしか履いてくれない。短くて7分丈だ。
「ごめんってぇ……」
『だから着ないよ？』
今年は多分Aの水着姿は雑誌でしか見れないのだろう。でも俺の自業自得だ。これ以上言及できない。
『というか、肌見せ以外にも夏らしいことはあるじゃん』
「それはそう」
『すいかとかかき氷とかお化け屋敷とかホラー映画とかバーベキューとか』
「……ん？」
食べ物の中にしれっとひときわ異質なものが混ざっている。
『そういえば私、マイリストにホラー映画追加したんだよね』
「Aさん？」
『プロジェクターも新調したの。今日持ってきたんだけど』
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
