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亮。後に大河ドラマで主演を務めることになる日本を代表する俳優の1人だ。今では映画やドラマで引っ張りだこの彼だけど、高校生の時は鳴かず飛ばずだった。
「芸能コースってどんな感じなの？ 雰囲気とか」
電車内ですっかり打ち解けた私達は隣合って座る。都心に向かって人々が増えゆく様を眺めながら話していた。
『そうだなぁ。ものすごく明るい人達ばっかり』
「マジ？」
『うちのクラス、なんか知らないけどダンスバカが沢山いるの。1人が踊り始めると周りも一緒に踊るからダンスが好きなら馴染めると思う』
亮はあからさまに不安そうな表情をする。色素の薄い瞳が絶望に満ちている。
「Aも踊るの？」
『そうねぇ、気分によるけど結構踊るかも。スカートで激しく動くからパンツ見えそうって言われちゃう。ちゃんとスパッツ履いてるんだけどね』
やだ、私ったら何を言っているのだろう。ついさっき出会ったばかりのクラスメイトにお下品だったかな……
「ふはっ」
そんな懸念を亮は笑い飛ばしてくれた。
「委員長ノリノリなんだね」
『……楽しくなっちゃうの、踊るの好きだから。人が踊ってると自分も動きたくなっちゃうんだよね』
「楽しそう。多分ノリに乗るのは無理だけど、Aがどんなダンスを披露してくれるのか楽しみ」
電車の中で爽やかな風が吹く。電車は自然豊かな原風景からビルが林立する大都会を滑走する。
『文化祭、参加できそうだったら見てね。器械体操同好会っていうダンス部みたいな部活が毎年発表してるから』
クラス内では委員長を務め、1つ上の先輩が引退してからは副キャプテンとして後輩を率いる。ダンスやミュージカルに青春を捧げる私がプレッシャーから解放されてラフに話せる。
「楽しみにしてる。俺のこと驚かせてよ？」
『もちろん！』
亮ともっと話したい。居心地がいい。ついさっき出会ったばかりだけど、昔から友達だったような錯覚に陥る。
電車を乗り換えてからはすし詰め状態の電車で喋る間もなかった。学校の最寄り駅に着いてからは横並びで歩く。背丈は同じくらいだった。
「俺ここからの道あんま分かんないから教えてくれる？」
『いいよ。なんなら職員室まで案内する』
「あざっす！」
駅から学校までは歩いて5分。新学期の始まりに胸を躍らせる高校生は希望に満ちていた。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
