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「でもこれだけは分かるよ？」
「これだけ？」
「Aは間違いなく陰のある正統派イケメンに惹かれやすいね」
Aは男の中の男、高身長で細マッチョが好きだと公言している。でも本当のAの好きな男性のタイプはミステリアスで何を考えているのか分からない、彫り深で大きな瞳が印象的なイケメンだ。案外筋肉や身長は関係がない。
「白馬が似合いそうっていうのかな？ 誰がどう見てもイケメンな男に惚れやすい気がする」
噂が流れた吉沢や元彼の小西さんはAが好む顔のストライクだ。
「恋愛経験が少ないが故に心より顔に惹かれやすいというか」
その上2人は、正真正銘誰もが認めるイケメンでハンサムなのに謙虚さまで持ち合わせている。
顔以外の武器を手にするために努力を積み重ねてきたのも共通している。現に吉沢は映像作品で、小西さんは舞台作品で自らのポジションを確立している。
「逆にふっかみたいな陽キャの個性派にはハマりにくい傾向があるね」
「おい、誰が個性派なんだよ。しかも俺はイケメンじゃねえってか？」
イケメンを端折っただけでうるせえ。口にすれば喧嘩になるからやめておいた。
「イケメンだけど、なんつーか、ふっかは賛否両論あるイケメンじゃない？」
冷やしうどんを啜りながらこっそり聞く耳を立てていた舘さんと水を飲んでいた翔太がぶふっ、と吹き出す。周辺のテーブルに麺つゆや水が飛び散ってびちゃびちゃだ。
「賛否両論あるイケメン……、くふふっ」
ラウも堪えきれずに小さく笑った。
「おいこら、それは遠回しなブサイクじゃねえか」
「ブサイクではないんだって。俺的にはイケメンだけど世間的に意見は分かれるかなぁって」
「お前さぁ……」
違う、そういうことを言いたかったんじゃない。俺の言葉が足りないせいで楽屋は汚れるし、ふっかは落ち込んでしまった。
「逆に言えば、Aは顔で選んだわけじゃないってことじゃん。顔より心に惚れたからふっかと付き合って結婚しようって決めたんでしょ」
「なーんか腑に落ちねえんだよなぁ……」
好きな顔は白馬が似合う王子様のような正統派のイケメン。でもAは顔よりも中身に惚れ込んでふっかを選んだ。時間はかかったけれどお互いに気づけた。
「要するに中身の良さが外見に反映されるようになったってことだよ。良かったじゃん」
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
