Time goes by 5th (ページ21)

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「別に拗ねたわけじゃないのよ」

『分かりやすく拗ねてたからね？』

隠せない。もしかしたらAも照も気づいているのかもしれない。俺が照の知らないご両親の姿をどうにかして思い出し、ひけらかそうとしたのを。

「そうだ、これAパパとママから」

照は持っていたもう1つの紙袋をAに渡した。

「30歳の記念にだって」

『これお父さんとお母さんからだったのね？』

「本当は宅配する予定だったらしいんだけど、俺が来たから照宅急便に任せたって託された」

照が俺の部屋ではなくAの部屋に行きたがった理由がようやくハッキリした。そういうことなら言ってくれたら良かったのに。

そもそも俺の部屋でも渡せたんじゃないか、との疑問はAが屈託のない少女のような笑顔で、嬉しそうに紙袋を受け取った瞬間に消え去った。

「じゃっ、邪魔者は消えるね」

『えっ。もう帰るの？』

「だってふっかが用が済んだら早く帰れって顔するもん。今はしてないけど」

「おい」

『ふはっ、なるほどね』

そういうことで、と照は悪い顔で足早に玄関へ消えた。Aは後を追いかける。見送るつもりなのだろう。少ししてAが戻ってきた。

『何が入ってるのかなぁ』

語尾に音符がついてみえる。紙袋から取り出されたのは包装紙とリボンでラッピングされた箱と1通の手紙だった。

Aは不思議そうな顔をしながら俺の隣に座り、箱よりも先に手紙に手を付ける。オレンジのケーキとグラスに入ったアイスティーが描かれた水色が基調の封筒。きっとお母さんが選び、書いたのだろう。

「箱の中身は見ないのね？」

『それは後で』

Aは中の便箋を広げ、目を通し始める。手紙は3枚に渡るようだ。

Aの様子を観察していると、程なくしてその眉が下がった。唇をグッと噛み、時折瞳に滲む涙を拭うような仕草を見せる。でも酷いことが書いてあって悲しんでいるのではない。ジーンと胸に迫る内容が書いてあったのだろう。滅多に涙を見せないAが思わずウルッときてしまうくらい嬉しいことが。

『ねえ辰哉』

「ん？」

『私、お父さんとお母さんの娘に生まれて本当に良かった』

俺の肩に遠慮がちにAの頭が乗る。俺は柔らかなショートヘアをゆっくり撫でる。箱の中には高級素材のフェイスタオルとバスタオルが入っていた。