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本当はAが人一倍気を使っていたのを知っている。劣等感や焦燥に駆られる6人とどのように向き合うべきか、真剣に考えた上で変わらず接してくれた。デビューを報告した時にほろりと流れた涙が全てだった。
「天邪鬼で素直じゃない男と文句も言わずに一緒にいてくれるんだぜ？ 多分Aしか上手く扱えねえよ」
本当は20代のうちに結婚し、妊娠や出産を経て家庭を築きたかったのも知っている。でも俺の仕事は結婚どころか恋愛そのものがリスキーだ。Aは理想を諦めてまでも俺と一緒にいることを選んでくれた。
「Aが本当に受け入れてくれるか分かんねえけど……、プロポーズは成功すると思う」
「すげえ自信だな」
「こうでもしないと落ち着かないのよ」
なるべく早く理想を叶えてあげたい。入籍しなくても幸せになれる世の中で、籍を入れて同じ苗字になって家族になりたい。
「さっきも言ったけど、俺は反対しないよ？ 大賛成」
照はビールをグイッと煽った。
「アイドルとしては失格かもしれないけど。こんな大切な時期に結婚とか入籍とかありえないし。でも俺とふっかはアイドル以上に大親友だし、俺とAも大親友だから反対できないししたくない。お前ら出会わせたの俺だから、最後まで責任持って幸せを見届けたいんだよね」
いつになく真剣で、いつになく柔らかい。照の言葉に胸が熱くなった。
「うつつを抜かさずグループ活動に取り組む、俺を婚姻届の証人にする。絶対守ってね。もし反対のメンバーがいたら俺が説得する」
「ありがとう。証人の件はこっちからもよろしく頼みたい」
照はやった、と目をクシャクシャにしながら笑い、喜んだ。既にSnowManの仮面を脱いだ1人の男であり、大親友の姿に戻っていた。
「さぁて、どうやってプロポーズすっかなぁ……」
1つの山を越えた。でもこれはスタートに過ぎない。
「婚約指輪の入った箱をパカッと開いて結婚してください。これが1番無難じゃない？」
「指輪、やっぱいるのかなぁ……」
「え、準備してないの？」
「……してない」
「バカ、いるに決まってんだろ」
「でも俺の選んだデザインがAの好みに合うかどうか分かんねえじゃん。俺は派手好きだけどAはシンプルが好きだし、せっかくなら好きなの選んでもらいたくない？」
「それは……」
「一緒に選ぶ楽しみもあるし？」
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
