Time goes by 5th (ページ17)

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「A、おかえり」

『ただいま。この人達辰哉に会いたかったんだろうけど良かった？』

「良かったぁ」

『じゃあ私は帰る。食料腐っちゃうし3人で楽しんで！』

「今おかえりしたばっかじゃん。冷蔵庫使えよ、帰んなよ」

ふっかさんには俺は佐野くんを連れて来ることとAさんを呼んでほしいこと、佐野くんには今からふっかさんの家に向かうのを伝えていた。

「待って待って。どういうこと？」

でもふっかさんとAさんが結婚を前提にお付き合いしていることは伝えていない。

「さっき同じマンションだけどふっかさんに興味ない雰囲気だったよね！？」

合鍵を持っているなんて知る由もない。

『うん。でも私がどういう人間か知ってたら騙されないはずだよね？』

エントランスで見た悪い笑顔とウインクが佐野くんに向けられる。

「やられたっ！この人詐欺師だった！」

『誰が詐欺師だ！』

どうやらAさんは前科持ちであるらしい。それでもまんまと引っかかっている佐野くんも従順だと思う。俺が言えたもんじゃないとしても疑いを知らないというかなんというか。

「おーおー、Aのプチドッキリにハマったのかな？」

「プチどころじゃないっす！まあまあデカめのドッキリですよ！」

心臓バクバクです、と佐野くんは左胸を押さえた。玄関で立ち話もあれだから、とふっかさんに案内されて3人揃ってリビングに入る。

「……つーか、佐野くんとAは仲良しさん？」

ふっかさんはどことなく2人の距離が近いことを気にしている。少し素っ気なくなったのは焼きもちが膨らみ始めた証拠だ。

『同じ事務所の後輩くんなの』

「なるほどねぇ」

そのままふっかさんは黙ってダイニングテープの椅子に座った。Aさんはキッチンに入る。慣れた手つきで食料を冷蔵庫に仕舞い、俺達にアイスティーを注いだり白の乳酸菌飲料を作ったりしてくれた。

『私お芝居メインで仕事してるけど、時々アクロバットとかダンスの振り付けしてるって話してるでしょ？それ、勇斗が所属してるグループの楽曲で担当させてもらってるの』

「グループ全体で仲良くさせてもらってます！」

佐野くんはアイドルグループに所属し、秋にはアリーナでの初単独ライブを控えている。

もう1つの顔があるのは知っていたけど、それがAさんとも繋がるとは思いもよらなかった。