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チッチッチッ、と人差し指を横に振りながら調子よくふっかは言う。
「んなもん、元からかっこよかったろ？」
調子に乗っているその顔も実はかっこよく見えたのは俺だけの秘密だ。ふっかには絶対に教えてやらない。
「ダルっ、お前鏡見てこいよ。髭マジでやばいから」
「お前が1番酷いよ！」
俺とふっかは同類だ。飽きっぽいし妙な所で潔癖でこだわりが強い。1度やると決めたことは最後までやり遂げないと気が済まない、しっかりB型気質の気分屋だ。そんな俺らは今でも2人で遊ぶけれど、若い時のように女遊びをして品定めをすることはなくなった。
特にふっかはAという存在に目覚めてからからっきし遊ばなくなった。友達としてはいいけれど、男としての魅力はゼロどころかマイナスと酷評した女友達を好きになった。聞かされた時は頭沸いてんのか、と感性を疑った。俺なら酷く傷ついて絶縁していたと思う。
でも今思えば、ふっかは停滞した日常に嫌気が差していて、自分の行いを一刀両断してくれる相手を求めていたのかもしれない。俺にはまだ見つかっていないけどふっかにはいる。しかもとてつもなく近い距離にいた。
「でもそういうお前を受け入れてくれるんだろ、Aって」
「……おう」
どんなにだらしなくてもAはふっかを選ぶ。ヒゲ脱毛をやめて白い肌に青髭が目立ったとしても、眠さを堪えて二重が三重になったとしてもAはふっかの隣で笑う。
そしてどんなに年老いてもふっかはAを愛する。トラウマを根性で無理やり乗り越えようとするところ、ツンデレなところまで包み込んでしまう。
「俺だけ置いていきやがって」
女遊び仲間は今の俺がどう頑張っても届かない場所へと、伴侶とともに向かおうとしている。
「先に行くよ」
「幸せにならないと許さねえから」
「幸せになるに決まってんじゃん」
ふっかは照れくさそうに微笑み、ポリポリと頭をかいた。
「で、ふっかはプロポーズ計画は進んでるの？」
照が話題を変える。どうやら先に知らされていたようだ。
「それなりに進んでるかな。バラの花束渡すつもりで予約しようと思ってる」
「ふっかがバラ！？」
涼太が目を丸くする。
「俺がバラよ。あの子意外とベタが好きだからさぁ、花束と一緒にプロポーズしようかなぁって……」
でもふっかには迷いが見えた。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
