呼び方を変えてみませんか その1 ページ1
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俺は今、人生において1番目に緊張している。Jr.として初めて立った先輩のライブよりも、何万人ものファンが入った自らのドームツアーよりも、口から心臓が出そうで少しでも動いていないと、ふくらはぎと太ももがガクガクブルブル震える。誰かと話していないと不安で押し潰されそうだ。
「なあ、照」
「ん？」
「俺さ、Aにプロポーズしようと思ってる」
名古屋でのドームツアーが終わればグループ活動が一段落するタイミングで久しぶりに照と2人で、飲みに来ている。
語り尽くせないほどの困難を一緒に乗り越えてきた。グループが大きくなるにつれて縛られることも増えたけれど、こいつらといれば、照がいればなんでも乗り越えられる。SnowManについて熱い話をしながら、俺は心から緊張していた。
照の少し垂れた目がこれでもかというほど見開かれる。
「マジ？」
「マジ。もうすぐ誕生日だろ？ その時にやろうと思ってる」
「なるほどな……。おめでとう、遂に俺の出番だね」
「早っ。反対とかしねえの？」
「するわけないじゃん。グループとして今が1番大切な時期だから公表は来年以降になると思うけど、入籍はいつしてもいいと思ってる。そもそもふっかとAの結婚に反対するメンバーはいないでしょ。舘さんとラウがちょっと悲しいだけで」
こちらが驚く程にあっさりと結婚を許してくれた。感謝しつつも呆気に取られている。
「でも早かったね。なんやかんやで30代半ばでやっとだと思ってた」
「俺もそうするつもりだったよ？ でも最近危機感を覚えてるのよ」
つい最近小瀧の件があった。去年の終わりから今年の春の終わりにかけてはAの周りで小西さんの存在がちらついた。
「このままだと俺、Aを他の誰かに奪われそうでさ」
特に元彼である小西さんの脅威は呑気に構えていた自分にとって大きすぎた。
10年前、Aが20歳になった日。Aは小西さんによって大人の世界へ導かれた。小西さんに告白されて人生で初めて彼氏ができたのは20歳の誕生日だったという。
「お前なら分かってくれると思うんだけどさ……、Aって小西さんのおかげで20歳の節目が忘れられない思い出になってんのよ」
ハンサムな大人の男が20歳になりたての女の子に真剣に想いを伝える。Aは小西さんの愛の言葉をしかと受け止めた。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年7月1日 21時
