Time goes by 3rd

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「ねえ。俺を巻き込もうとしないでよ……」

俺は嫉妬深い。彼女が他の男と笑い合っているとものすごくムカつく。そもそも話しているだけでモヤモヤするし、もし彼女が自分以外の男を好きになった、別れたい、と言い出したら相手の男をぶっ飛ばすと思う。俺以外の男の前でのスカートだって絶対に許せない。

嫉妬して心が疲れるのを知っているからこそ、自分の仲間に同じような思いをしてほしくない。それがふっかであろうとAであろうとだ。


「あのね、A」

『はい』

「嫉妬はね、本当に苦しいんだよ。Aが思ってる以上にしんどいし、どこにモヤモヤをぶつけていいかも分かんない。本当は翔太くらいサバサバしたいんだからね？」

「お、俺？」

確かにふっかは翔太ほどではないけど、かなりあっさりとした恋愛観を雑誌内で語っている。よく言えば自立した関係を求めている。


「心配しなくてもふっかって雑誌ではああいうこと言ってるだけで実際は結構嫉妬してるよ」

基本的にAの願いは叶えたいけど、ふっかを嫉妬させるための画策には協力できない。


『そうなの……？』

「俺より重い時もあるからね？」

「深澤辰哉が？」

「深澤辰哉が」

俺が聞かされているからだ。

Aの女優としての活躍は嬉しい。でも舞台でラブが絡むストーリーになると、キスシーンが最低でも1つは出てくる。

ドラマや映画なら上手くいけば1回きりでキスシーンは終わるけど、舞台ともなると毎公演相手役の男とキスをしなければならない。演出家の指示によってはフリじゃない時がある。


「ふっかは縛り付けたくないから、Aに見せないように裏で一生懸命隠してるんだよ？」

仕事とはいえ自分以外の男とほぼ毎日キスをする。演技であっても恍惚の表情を見せられると、胸が締め付けられる。直視できない。

相手役はAの身長に合わせて180cmを超えていたりその周辺だったりする俳優が多いから、自分は見捨てられるんじゃないか。

舞台共演がきっかけで恋に落ち、結婚に結びつくカップルも多い。これが嫉妬なのかな、とふっかは付き合う前にも関わらずかなり落ち込んでいた。


「キスシーンもできればしてほしくないって考えてるくらいだから、あいつ」

『知らなかった……』

多分Aは安易に嫉妬させようと試みたことを後悔している。それでいい。諦めるべきだ。

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