Time goes by 3rd

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『失礼だよねぇ。取るつもりないのに』

怒られるかもしれない、と怯えた俺はクリームを2つ買ってAに差し出した。でも当の本人はまだ沢山あるのにどうしてこんなに、と戸惑っていた。怒りもしなかった。


「でもあれだ。ふっかの肌の状態で説得力あるよな。お前毎年花粉で赤みがあるのに、今年そんなにないもん」

「そう？」

『最近の辰哉くん結構頑張ってるからね。クリーム塗った後はマッサージしてるし、髭剃った後もちゃんとスキンケアしてる。導入美容液の使い方を聞いてくるようになった』

Aの思惑にまんまとハマり、佐久間と照の考えすぎに翻弄された。でもおかげで俺は例年よりも季節の変わり目の肌荒れに悩まされずに生活を送っている。


『イケメンは努力するともっとイケメンになるってことだよ』

全身が熱くなった。女の子が好きな男に可愛いと思われたいように、男だって好きな女の子にかっこいいと思われたい。まだまだ発展途上だけど、努力の成果が確実に現れている。それを親密な相手が認めてくれる。


「待って、俺挟んでイチャつくのやめろ？」

正直とても嬉しい。


「でもこいつ髭やばいじゃん。青みヤバすぎてブスな時多いよ？」

でも翔太は上がりかけた俺の気持ちを滅多打ちにする。


『髭に関しては特に気になってないよ？』

「嘘だろ？」

『だって私の周り、役作りで髭蓄えてる俳優さん何人かいるもん』

「でも付け髭の人もいるじゃん」

『いるけど付け髭も苦労するみたいだよ？ 毎日付けたり剥がしたりして皮膚が薄くなって荒れるから、生やしてた方が絶対に肌に優しいって人もいる』

「ちなみに誰に聞いたんだよ」

翔太は再びムスッとしながらジト目でAを見つめた。


『先輩がインスタライブで言ってた。ちょっとしか見てないけど』

「先輩……？ 元彼じゃんか！」

本当に油断ならない。AもAで少しでもインスタライブを見ていたことに驚かされる。


「あー、あのハンサムお兄さんか。あの人は例外だろ。何しなくてもかっけえじゃん。でもふっかは髭脱毛しないとマジでヤバいと思う」

『私がいいんだからいいの』

今度はAがムスッとして翔太を睨む。


『口周り青くてもいいじゃん。人間味がある辰哉くんがいいの』

「なんだよ……。お前めっちゃ好きじゃん」

翔太は呆れつつもはにかんだ。

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