Time goes by 3rd

ショートヘア ページ18

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黒髪ショートの王子様系美人。それが高校時代のAの代名詞だった。

女子としては高い身長、整ったフェイスライン、はらりと零れたワンレンの前髪を耳にかける仕草、涼しげな横顔が美しいと女の子達が目をハートにする。

その上踊らせると柔らかさと力強さを両立し、大怪我から完全復帰してからは大胆で流れるようなアクロバットを披露する。狙っているのに狙っていない。ダンスの一部として扱われる技は見る者を圧倒する。俺もその1人だ。モテまくった高校時代、俺のライバルはダンスもアクロバットもモテ度もAだった。

高校2年の冬から伸ばし始めてからはセミロングかロングヘアをキープしていて、もう10年以上ショートカットの彼女を見ていない。

Aはロングヘアが良く似合う。しっかりケアされていてツヤツヤしている。華やかな顔立ちにはウェーブがかかったロングヘアが映えている。でもたまに中性的なショートヘアが見たいな、と思うわけだ。王子様と呼ばれていた頃の彼女のショートヘアが。

今日は1日中ゲーム動画の撮影だった。事務所内のゲーミングルームでも飽き足りずに家でもテレビゲームをしていると、

『ただいまぁ』

緩い声がリビングに響いた。


「おかえりぃ」

静かに入ってきたらしい。俺は少し驚きつつも、悟られないように返事をした。


「……え！？」

したはずだった。テレビにぼんやりと浮かんだAの姿を見るまでは。完全に動揺した俺はボタンを押し間違え、敵の必殺技を食らった。思わず振り返る。


「えー！！！ お前髪切ったの！？」

『うん。お久しぶりにどう？』

ショートボブよりもさらに短いショートヘアだ。緩いパーマのかかったダークブラウンにワンレンの前髪が色っぽい。


「いやぁ、最高。綺麗です……」

『んはっ！』

「今なら罵られてもいいかも」

『キモすぎてるからそれは』

「自分でも思った。今のはキモすぎた」

耳元のイヤリングが揺れる。付き合う前に渡したイヤリングをAは今も大切に扱っている。


「役作り？」

『んーん』

首を横に振る。Aは首も長い。


『気分』

「気分？」

『私しばらく舞台続くじゃん？ カツラ被るから久しぶりにショートにしたくなったの』

「なるほどねぇ」

『ショートでも女っぽくなれてるかな？』

「もうね、ビックリするくらい女っぷり増してるよ？」

古傷の痛みは(♡)→←＊

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