Time goes by 3rd

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Aとドライブに行くのは久しぶりだった。Aは福岡と東京の行き来が続いているし、俺は歌舞伎の本番期間中で本来ならば疲れてすれ違いがちだ。でも互いに歩み寄ろうとするから今日みたいに遭遇できる。

Aが戻ってくるのを待ちながらスマホを操作する。舞台が終わるまであと1ヶ月。歌舞伎が終わるまで約20日。長いと思っていても始まると意外と短い。いつかAが言っていた。ガチャッと自動ロックが開いた。どうやら買い物を終えたらしい。


『はい』

「サンキュー」

カフェラテと思われる紙カップの飲み物とお菓子が入っているレジ袋を持って戻ってきた。メイク落としは手渡されたけれど頼みの領収書は相変わらず焦らされる。


「領収書は？」

『ない』

「なぁ、」

『いいの！ 今日は奢り！』

「奢られてばっかだよ、俺……」

女の子に財布を出させたくない。でもAは俺に財布を出させない。


『私が連れ出したんだから責任持ってお支払いしますよ。とりあえずキャベツどうにかしようよ』

不服ではあるけれど、甘えるしかない。顔が乾燥して仕方がない。


『あ、やっぱちょっと待って』

「ん？」

俺の腕を掴んだAは運転席のドアの収納に入れていたスマホを出して俺と肩を組む。


『せっかくだから写真撮ろうよ』

「お前ノリノリじゃん！」

『慣れたらただのおもろい深澤辰哉なんだよねぇ』

そう言って楽しそうに自撮りを始めるから、俺もパキパキの顔でできる全力の笑顔で決めた。

本当はかっこいい所だけを見せていたい。でもAは俺のどんなにダサい姿も受け入れてくれる。パンストを被ればひっくり返るほど笑うし、どんなに滑ってしまってもAだけは涙を流して笑ってくれる。

かっこ悪い部分をさらけ出せることも悪くない、なんて思えるのはAの包容力のおかげだ。


「だべ？ 意外といけてんだろ？」

『いけるけど何も知らないとただの不審人物だよ？ すれ違ったのが私じゃなかったら警察行きだからね？』

「上げて落とすんじゃないよ」

気が済むまで自撮りに付き合い、ついでに俺のスマホでも自撮りをした。俺達が高校生の時、スマートフォンは存在していたけど普及していなかった。ガラケーで沢山の写真や動画を撮ったことが思い出される。


『よっしゃ！ 今度こそ行きますか！』

「やべっ、取らなきゃ」

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