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「えっ……」
ふっかは意表を突かれたらしく、言葉を失った。
『すぐに会わなくなるのは無理だと思うけど、徐々に会う回数を減らすかな。最終的には連絡先消すと思う。いい雰囲気になっても縁がないんだろうなって潔く諦めるつもり』
「そんな残酷な感じ……？」
『仕方ないよ。ふっかが思うより言葉の力って半端ないんだから。意識してる人に貰うプレゼントと同じくらい、意識してる人からの好きって嬉しいものなんだよ？』
ふっかは前髪をかきあげて頭を抱え、カウンター席のテーブルに両肘を突いた。ふっかも私も好きだとは言っていない。でもお互いに言っているようなものだ。
『多分これが最後の恋だと思ってる。次に付き合う人は結婚相手になるだろうから、慎重に行きたいんだよね。言葉で伝えてくれない人を相手にはできない。そういうのが最終的に隠し事に繋がってくるし』
「そっか、そうだよな。お前隠し事が1番嫌いだった」
『隠し事をする人とは結婚できない。付き合えない』
それでも言葉がほしい。自分もふっかに隠し事をしている。言葉で伝えていないのは重々承知の上だ。
「そうだよなあ……」
ふう、と深く息を吐いたふっかは小さな声で男を見せろ俺、と呟いた。聞こえていないと思っているのか、わざと聞かせているのか。私に好きと言わせるためにレールを敷いていたはずだ。
でも相手に言うつもりがないのを知った時、ふっかはどのように動くのか。正直興味もあった。動揺して余裕がなくなっている姿も好きだな、と思う。
「お前はさ、そいつが好きだって言ったら言ってくれるわけ？」
『もちろん。伝えないと伝わらないもん』
ふっかは髪の毛を元に戻して頭を上げ、姿勢をただして私と向き合った。
「参りました」
『ん？』
「完敗」
『え、コーヒーとカフェラテで今さら乾杯？』
「ちげえよ！ 完全敗北な！？」
ツッコミの勢いだけは変わらない。私がボケてツッコんでくれるのはふっかだけだ。そもそも私はふっか以外の男性の前でボケない。彼は気づいているだろうか。
「お前俺がAが好きだって気づいてたの？」
『うん』
「気づいてるなら言えよ……！」
『10年の親友舐めないで？ こちとら生半可な気持ちでふっかと向き合ってないの。その手の話何回も聞いてるんだからこっちにだって作戦はあるよ？』
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年3月3日 22時
