舞台上のあの子 ページ4
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ラーメンが深澤先輩に、深澤先輩がふっかに、そしてふっかが辰哉くんに。関係が変わる度に呼び方が変わる。次に変わるとしたら結婚して同じ苗字を背負った時だろうか。
「どう？ 稽古は順調？」
『うん。結構いい感じに進んでるよ』
役柄に応じて殺気を纏い、クールなAは男を凌ぐほどかっこいい。そして男よりも強い。
Aは背中で物語るのがとても上手い役者だ。扮装写真の洗練された表情にも期待が高まる。今度はどんな藤井Aを魅せてくれるのだろう。稽古を重ねてカツラや衣装を身に纏ってメイクをしたらより一層役に染まって、演じるどころか憑依して彼女の一部になるのだろう。
「辰哉くんは？」
『俺？』
「滝沢歌舞伎」
初めて藤井Aの生の芝居を観た時から、俺は女優”藤井A“のファンだ。もし時間があるのなら喜んで観劇したい。できることならAの舞台、ドラマ、映画は全てチェックしたい。
「俺んとこはまだだべ。本番は4月だから本格的な稽古は2月の終わりから。少しずつ動いてるけど」
『そっか』
Aは空を仰いだ。黒のパーカーとスウェットパンツ。今日はMLBのキャップを被っている。マスクにもオシャレを取り入れたいAはグレージュの不織布に紐が黒のマスクを着けている。
たったそれだけの姿が妙に映えるのは彼女のスタイルの良さゆえか。それとも俺にフィルターがかかっているからか。
「寂しい？」
『ちょっとね。滝沢歌舞伎終わったら辰哉くんのお芝居永遠に観られなくなっちゃうし……』
Aは声だけは寂しそうに呟いた。きっとマスクの中はニヤけている。寂しそうだけどどこかわざとらしい。
「あの、Aさん？ 俺ドラマ班よ？」
『でもSnowManはドラマと書いてバラエティじゃん？』
「そうだけど。だとしても永遠に観られなくなるわけじゃないからね！？」
『分かっとるよ！ コントで見られるもんね？』
「バカ野郎。本気になれば俺だって想になれんだよ」
俺は女優としての彼女が好きだ。身を削りながら役と向き合う姿には時々ヒヤヒヤさせられる。でもそれ以上に女性としてのAに惹かれている。
『待って。辰哉くんってまさか自分が目黒蓮って勘違いしてる？ 家帰ったら鏡見てみな？ めちゃくちゃ深澤辰哉だから。目黒蓮どこにもいないから」
「俺が1番知ってんだわ！」
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年3月3日 22時
