面白いもの ページ23
·
「ねえA」
『ん？』
「生のラウールと生の俺、どっちが可愛かった？」
『ラウールくんに決まってんじゃん。30が19に勝てるとでも思ってる？』
「うん、マジレスはやめよう？」
2人がけのソファーで寄り添うふっかさんとAさんはちゃんとカップルなのに会話だけが友達のようだ。
ついこの間までドラマで共演していたAさん。主演として現場を引っ張る姿がとてもかっこよかった。でも撮影が始まると瞬時に役が憑依する。まっすぐな女性を見事に演じきった。
俺は夏の終わりから冬が深まるまでの3ヶ月半、『silent』な世界で紬と想を通してAさんと接してきた。
『まずすっぴんが違うから。ラウールくんはゆで卵みたいたけど、辰哉くんは……』
女優のAさんはSnowManの中で誰よりも知っているつもりだ。でも素のAさんはほとんど知らない。
「哀れむなよ。ほら、触ってみ？ 最近調子いいんだぜ？」
Aさんはふっかさんの右頬をその左手で撫でて本当だ、と喜んだ。
『一時期砂漠みたいだったのに生き返ってる！』
「だべ？ 俺今スキンケアめっちゃ頑張ってるから」
『あのクリーム良かったでしょ？』
「めちゃくちゃ良かった」
心から安心しきっている表情。『silent』の現場では見たことがない。
『煙草やめたのも大きかったんじゃない？ 吸ってた時のふっか老けて見えたし。今の方が若いよ、絶対』
ふっかさんはAさんに甘い。Aさんもふっかさんに厳しいようで甘い。2人の左手と右手は重なったまま離れない。
「さすがにねえ、俺も考えるのよ。ラウが入ってきたのもあるけど、将来お前と結婚した時悲しませたくないのね？ 俺好きな子には悲しみの涙1つ流してほしくないし。少しでも長い時間一緒にいたいじゃない」
「久々にふっかとAちゃんに会ったけど相変わらずふっかがベタ惚れだよねえ」
静かに聞いていた目を輝かせて阿部ちゃんが会話の中に入る。今の雰囲気の中で乱入する自信がなかった。
「ベタ惚れなんてもんじゃないよ。こちとらそれ以上なのよ」
ふっかさんの隣でAさんはほのかに頬を染めて目を丸くしていた。
·
歌番組の収録が終わって各自解散をする中、阿部ちゃんと俺は2人でふっかさんの家にお邪魔することになった。それが事の発端だった。
「目黒、今日は面白いものが見れるよ？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 904人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年3月3日 22時
