Time goes by (ページ14)

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恨み節をありがたく受け取っていると、

『遅れてごめん！』

救世主のようにAが入ってきた。肩にはベージュのトートバッグを提げ、手にはラッピングされたプレゼントが入った紙袋を3つ持っている。空いていた俺の隣に座った彼女は仕切るようにバッグを置いた。

『阿部ちゃん久しぶり。卒業決定おめでとう』

「お久しぶり。ありがとう、どうにか決まったよー」

2人とも顔を合わせるとニコニコで話し始める。

『すごいねえ。本当にすごいよ。忙しい中よく頑張りました！』

パチパチパチと拍手をしたAははいどうぞ、と紙袋を渡した。

『阿部ちゃんが卒業しても勉強は続けるらしいって照から聞いたから、ピッタリなの選んできた。囁かだけど使って？』

阿部ちゃんは中からプレゼントを取り出し、包装紙を丁寧に破く。出てきたのは木の細長い箱と皮革のカバーに覆われた薄い本だった。

「え、どこが囁かなの？ノートとカバーとボールペン？マジでいいの？」

『いいよ！阿部ちゃんのためだし』

「しかも名前入りじゃん！」

『何年も使えるのがいいのかなあって。ノートカバーはノート使い切っても使えるし、ペンもインク替えたら繰り返し使えるし。私も去年卒業した時に阿部ちゃんから名前の刻印入りブックカバー貰ってすっごい嬉しかったからお返し！』

「やったあ！」

芸能コースでありながら勉強も本気で頑張っていたAは、クラス内で優秀な成績を収めていたらしい。高校を卒業した後は通信制の大学に進学した。しかも最難関私立の通信制で阿部ちゃんの出身校とも肩を並べる。

「大切に使います」

『こちらこそこれからも大切に使います』

Aは西洋文学を学び、時々学校にも通っていた。大学4年の時に地方で大きな仕事をしていたから1年間休学を経験したけれど復学してからの1年間で卒業要件を満たし、ちょうど1年前に卒業した。

「ねえ、俺の分は？」

高校生の頃、阿部ちゃんとAが一緒に勉強していたのを思い出す。The理系の阿部ちゃんにThe文系のA。互いに足りない部分を補っていたのが懐かしい。

阿部ちゃんが受験のために芸能活動を休んでいた時も2人は一緒に勉強していた。同時に、卒業後は仕事中心の生活を送るつもりだった照が同い年組から取り残された。毎日寂しそうだったのも今となっては懐かしい。