Time goes by (ページ13)

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Aは決して2人きりでは飲みに来てくれない。だから今日は阿部ちゃんの大学院卒業決定祝いをするから来れるなら来てほしい、と予約した居酒屋の地図をLINEに送り付けた。
Aは遅れるけど行ける、と返してくれた。

「ええ！？ふっか、Aちゃん好きになったの？」

なべは意外と驚かなかったけれど、先週の照と今日の阿部ちゃんは大きく驚いた。男3人で少しむさ苦しい個室の座敷席で阿部ちゃんが目を大きく見開いて仰け反った。

「おう」

「いやあ、ちょっとびっくり」

「全然ちょっとじゃなかったよ」

照の冷静なツッコミが冴えている。照と阿部ちゃんは俺より1つ年下だ。要するにAと同い歳だ。それぞれタイプは違うのに3人が集まるとほのぼのとした雰囲気に包まれる。

「え、照は知ってるの？」

「うん。ふっかに教えてもらった。だから最近仕事場でも朝帰りの匂いがしなくなったんだよ」

「ほえぇ……」

「この機会に遊ぶのやめちった」

「愛の力だね」

「やめろよ。なんか照れるじゃん」

非科学的なものを信じない阿部ちゃんに非科学的な力のおかげで変わった、と思われた。やっぱり小っ恥ずかしい。

「だから俺らは呼ばれたんでしょ？お前Aが2人きりで会ってくれないの知ってるから。阿部ちゃんの大学院卒業決定祝いの飲み会ってことにして誘ったら多分来てくれるし」

「え、俺メインじゃないの……？ Aちゃんメインなの！？」

阿部ちゃんはわざとらしく悲しい、と泣き真似を始めた。

「そ、そんなことはない！」

「でもAから聞いた。阿部ちゃんへのプレゼントは何がいいかなってLINE来て、どういう用事で誘われたのか聞いちゃったんだよね」

「じゃあ俺、Aちゃんからプレゼント貰えるんだ。嬉しい」

「良かったね」

2人はニコニコ笑い合う。

「ふっかは許さないけど」

「すみません……」

「うそうそ。本気で人を好きになって落ち着くのはいいことだよ。ふっか遊び始めてから明らかにフレッシュさ消えたし。若返るんじゃない？」

「あの、阿部ちゃん。遠回しにおじさんはやめて？」

「おじさんとは言ってねえよ。でも酒臭い煙草臭い香水臭いの三重苦で勉強の邪魔だった」

阿部ちゃんの恨み節もかなり堪える。改めて俺はだらしなく、言わないだけで皆に迷惑をかけていたんだなと申し訳なくなった。