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「じゃあ男としての魅力を持てばいいじゃん」

翔太はニヤリと口角を上げて煙草の箱をポケットに仕舞った。

「遊び人ふっかと付き合いたくないってことは遊び人じゃないふっかとは可能性がある。俺が言えたもんじゃないけど、本気で付き合いたいなら取っ換え引っ換えやめちまえ！」

やっぱりそうなってくるんだな。俺はAを女の子として見ている。今まではどこか遠くの世界にいるように感じていたのに、俺をどれだけ近くで見てくれているのかを知ってしまった。

「そうだな。やめなきゃ」

「やめろやめろ。ついでに俺もやめる」

「マジ？なべも？」

「うん。俺はお前の好きな子が好き……とかじゃないけどさ、遊んでるお前が魅力マイナスなら俺もマイナスってことじゃん。軽い男なんざやめてやる」

なべは再びニヤニヤし始めた。

「でもまさか、ふっかがあいつ好きになるとはな。お前女として見てないんじゃなかった？」

「うるせっ。あの顔で内面揺さぶられたら誰だって落ちるんだって……」

遊んでいた自分に説得力はないけど、恋愛においては内面を重視する。でも意識し始めると顔まで可愛く見えてくる。
高身長、ショートカットの高校時代は中性的で宝塚の男役のようにかっこよくて女の子からモテていた。そんなAが可愛い。見る目が180°変わった。

「俺優しいからふっかにいいこと教えてやる」

「いいこと？」

「あいつな、ちょっと前に彼氏と別れたんだって」

「マジぃ！？」

ついデカい声を出してしまった。俺が2本目を吸い終えた所で、なべは行こうぜ、と手招きした。
Aが俺の女遊びを知っていたように俺もAの男性関係を知っている。なべの言う通り、Aには4年付き合っている彼氏がいた。20歳の誕生日に憧れだった12歳年上の同業者から告白されたらしい。

「信じらんねえ。なんで？」

「詳しいことは聞いてない。報告だけ来た」

「そっか」

人の不幸を喜ぶなんて趣味が悪い。でもAを女として見ている男の1人として、千載一遇のチャンスがこんなにも早く訪れるなんて喜ぶ以外の何物でもない。

「聞いてみっかぁ」

「お前聞くの？」

「聞くよ？なんでなべに教えて俺には教えてくんなかったかも含めて」

お前嫉妬しないんじゃねえのかよ。なべが慌てている。嫉妬はしない。でもAは例外だ。