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「でさ、この前さ、その子交えて何人かで飲みに行ったのよ」
俺は包み隠さずAに言われた通りに翔太に話した。
俺達はファンから悪友だと言われることがある。でも実際も悪友だ。2人で夜の街を歩いては、ジャニーズの名前を使って女の子達をナンパする。
抱けそうな子を見つけられたら、分かれてそれぞれホテルで1晩過ごす。身体の相性がそれなりに合っていたら連絡先を交換する。抱きすくめるためだけの女友達は何人もいた。
アイドルの裏の顔としても1人の男としても、最低だとは自覚している。でもやめられなかった。一瞬の快楽がストレスを忘れさせてくれた。
「きっちいな、それ」
翔太は分かりやすく顔を歪めた。多少なりとも響いたのだろう。
「な。その通りだもん。でもここからが本題」
「ここから？」
「おう」
これも思った通りに話した。
「あれからその子が頭から離れてくれなくてさ。俺親友に何言わせてるんだろって。
どう考えても言いにくいのに酒の力も借りなかったんだべ？ 弱いのもあるけど。俺って相当酷いあり様なんだって気づいたら情けなくて……」
今でも鮮明に思い出せる。Aの言葉と表情は砕けているようで真面目だった。俺に対して真剣に怒ってくれた女の子が家族以外でいただろうか。
「ふっかはさ、一瞬でもいいからその子に男として見られたい？」
「見られたいね」
俺は人に助けを求めるのが苦手だ。
「それはアイドル深澤として？ リアル深澤として？」
1人で解決できる問題はできれば1人で解決したい。
そんな俺が誰かに助けを乞う。この苦しみの正体を、恐らく俺が気づいていて見て見ぬふりをしている感情に逃げ場をなくしてほしい。
「リアル深澤かな。一瞬と言わず永遠に男として見られたい」
1本目の煙草はすっかり短くなっていた。揉み消して2本目に火をつける。
「だってさ、結局アイドル深澤は虚像でしかないじゃん。実際アイドル深澤よりもリアル深澤の時間は長いし。まだまだ隠してる部分があるけど、素の深澤の深い部分を知ってほしい。あの子に見透かされたい」
「……お前さ、それはもう恋だよ。お前の中で友達以上になっちゃってるよ？」
喩えを省いた翔太らしいストレートな結論だった。
「残念ながら魅力ゼロ以下マイナスだけど」
「やめろよ。結構悲しいんだぞ……」
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年3月3日 22時
