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ふっかさんの住むマンションは大きい。デビューして俺もそれなりの高級マンションに住ませてもらえるようになったけど、いまだに慣れない。
ふっかさんは慣れた手つきでエントランスのロックを開く。宅配と郵便の確認をしたあと、遂にあの子さんを紹介してもらえる。
「あーやだやだ。本当にやだ」
「今さら隠すものじゃないでしょ?」
「そうだけど。俺がデレてるとこ見られるのがやだ」
「じゃあデレなければいいのに」
「無理だよそんなの」
ふっかさんがラウンジのドアを開ける。中には緑の女神がモチーフのコーヒー屋で買ったであろう紙カップの飲み物を飲む女性がいた。
「Aただいま」
『辰哉くんおかえり』
テーブルには紙袋が置かれている。その顔を見て俺は再び驚いた。
「は? まさかAさんがふっかさんの彼女?」
『うん』
ついさっきまで同じ番組に出ていた人。つい最近までドラマで共演していた人。
「……カメラあるでしょ。絶対ドッキリだ」
俺はラウンジを見回った。AさんはSnowManはあまり見ていない、と撮影の休憩中に俺に言ったではないか。ふっかさんやSnowManとの接点があったとは思えない。だからドッキリ。俺を驚かすためのタチの悪いドッキリだ。
「探してもないよ。ドッキリじゃないから」
「マジ? 本当に? モニタリングの検証じゃないの? もしもSnowMan深澤が女優と付き合っていたら目黒はどんな反応をする的な」
阿部ちゃんに諌められても全く信じられない。
『実は……』
「実は、じゃねえよ! 現実だろ?」
『辰哉くんがドッキリに引っかかってたんじゃない? 4年も』
「そんなこと起こってたら俺泣くよ?」
『泣かなくていいよ。ドッキリじゃないから』
「相変わらず面白い会話するよね、2人って」
でもふっかさんとAさんの独特な間合いでこれはドッキリではなく、れっきとした現実なんだとようやく受け止めることができた。
「マジかよ。信じられない……」
『私目黒くんにSnowManあんまり分からないって言ったけど、彼氏がメンバーだからめちゃくちゃ見てた。嘘ついてごめんね?』
「いえいえ、事情はあるでしょうし……。驚いてるしまだ信じられないけど、とりあえずふっかさんの家に行きません? ここじゃない所で詳しい話聞きたいっす」
聞きたいことがありすぎて整理ができないから。
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2023年3月3日 22時