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「なんせ、俺が生まれて初めて告白した相手なんだから」
“今日はお寿司だよ！☺️”
散歩と近場のラーメン屋で食事をするくらいしか目立った外出はできない。
「離したくねぇって思えたのもAだけなのよ」
アイドルと女優のデートとは思えないくらい質素なことしかできていない。付き合ってから1年でコロナ禍に入った。イレギュラーな状況でなくてもオープンな交際は叶わない。
「多分今家で寿司と一緒に待ってる」
きっとカップルYouTuberのようにはなれないだろう。でも囁かな時間が幸せで、言葉が少なくても不思議と心地よい。
「分かった。理由はよく分かった。しょっぴーと2人で行くよ」
早く帰ってあげな、とめめは老若男女問わず惚れてしまいそうな爽やかな笑顔でシッシ、と手を振った。
「言葉と行動が伴ってねえよ！」
「だってAさんが可哀想だもん。俺はAさんのためにふっかさんを帰す」
「お前本当にAリスペクトだね？」
「芸能界で色んな人に出会ったし、尊敬してる俳優さん何人もいるけど人としても強く尊敬できるから。Aさんは」
「喜ぶよ、あいつ」
「だから早く帰りなって。あ、俺が帰ろうか？ ふっかさんはしょっぴーと焼肉行く？」
「行かねえよ。俺がAと家で寿司だから」
「おい。俺はついでかよ」
翔太は透明なリップを塗ったツヤツヤの唇を尖らせて拗ねている。
「めめのついでならいいけど、ふっかのついではなんか納得いかねえ」
「なんでだよ」
荷物をまとめて準備はできた。今朝取りに行ったペアリングの紙袋も忘れずに持つ。
「お前まさかプロポーズでもすんの？」
「プロポーズならとっくの昔にしてる」
「はあっ！？」
付き合う前、俺はAにブランド物のイヤリングを送った。数年後、まさか自分がそのブランドでアンバサダーを務めることになろうとは微塵も思わなかった。そして今回も同じブランドのブティックにお世話になった。
「付き合うイコール結婚の相手。あいつもよーく知ってる」
顔で気づかれるかなぁ、なんて思い上がっていたけれど最初から最後まで顔バレすることはなかった。名前でもバレなかった。気を使われたのかもしれないけれど。
「またな！ 次こそは行くから！」
俺は相変わらず爽やかなめめと呆然と立ち尽くしている翔太に手を振り、楽屋を出た。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年3月27日 21時
