Time goes by 2nd (ページ18)

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俺のためにページ18

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実家で暮らしていた頃、寝坊しそうになるとお母さんが起こしてくれた。

毎日欠かすことなくご飯が出てきた。温かいお風呂は準備してあるし、学校の日は何を言わずともお弁当を作ってくれる。洗濯も掃除も欠かさず終わっている。学生の時は当たり前だと思っていた。

だから、1人暮らしを始めて自分がいかに母に頼りっぱなしだったのかを思い知らされた。

特に料理に関してはいつまでもできない。パックご飯に卵を割り入れ、醤油をかけて卵かけご飯を作ったことはある。それっきりだ。

家でご飯を食べる時は帰る前にコンビニで弁当を買うか、現場で貰った弁当を持って帰る。カップ麺は常備してあるし出前だってある。どれも美味しくてあっという間に満たされていたはずだった。

でも目の前で4分の1ほどのキャベツが可憐に千切りに変身する。

「お前、料理できんの……？」

『できるよ？』

サッサッサッ、サッサッサッ、と包丁が動く。もし俺がやったら、ゆっくりでも千切りとは言えないぶきっちょなキャベツになっていたはずだ。

『できないように見える？』

「いや、そういう意味じゃないけど……」

料理に挑戦しよう、と形から入って使われなかった調理器具はAの手によって職務を担っている。

『ふっか知らなかったっけ？私高校の時は自分でお弁当作ってたんだよ』

「マジぃ？言ってくれたらよかったのに」

『つまみ食いするから言わなかった』

彼女ができたら1度でいいからその子の手料理を食べたいと願っていた。その彼女になったのがつい最近まで親友だったAだ。

俺はカレーが食べたい、と頼んだ。いざ今日という日を迎えて楽しみに待っていると、Aは食材を詰めたエコバッグ2つを両手に持って遊びに来てくれた。

「よく知ってんじゃん」

『彩芽ちゃんに聞いてたからね。超キモかった』

「待って？辛辣すぎない？」

調子に乗っていた俺を身も毛もよだつほどの目で見ていたAが、俺の彼女として家に来てくれる。この世では不思議なことがよく起こる。

『彩芽ちゃんで良かったと思うよ？私のお弁当でやってたら多分顔がボコボコに腫れてたよ？』

「やべえじゃん。俺相当恨まれてたかもしれないじゃん」

『だから良かったよね』

イヒヒ、と悪い笑顔を見せながらAはボウルとザルを重ねて水を張り、切ったキャベツを入れた。