ガチリアル深澤の願望(♡) ページ2
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私は何をお願いされているのだろう。多分今の私は辰哉くんに軽蔑の目を向けていると思う。
「お願い! 一生のお願い!」
『はあ……?』
「1回、1回でいいからチャイナ服着て!」
彼の両手には眩いほどに艶やかな紫のチャイナ服がある。モデルの着用イメージを見ると、そのチャイナ服はロング丈だ。でもロング丈なのにスカートの両裾のスリットが異様に深い。太もものつけ根の辺りまで切れ込みが入っている。
『理由を述べてください』
「お前美脚なのにほとんど脚見せしてないじゃん? そもそもスタイルいいのにピチッとした服を着てないからもったいねえなって。俺思ったのよ」
雌雄眼が私の全身をなぞる。
『ドスケベじゃん! バカ!』
「そうだよ! お前の前ではな!」
逆ギレだ。もはや開き直っている。
「お願いお願い!俺の前だけでいいから!」
辰哉くんは土下座する勢いでしゃがむ。本気なのか。この男は本気で着てほしいのか。
『分かったから! 着るから土下座しないで?』
さすがに焦ってしまった私はまんまと辰哉くんの策略にハマった。
「いいの?」
見上げたそいつは目をキラキラさせている。
『いいよ。でも心の準備をちょうだい?』
「分かった。待ってる」
私は半ば奪うようにチャイナ服を受け取り、寝室へ逃げた。
さて、あの男をけちょんけちょんにするにはどうすればいいだろうか。照を呼び出す? いや、それは違う。照にまで醜態を晒してしまう。最終的に私が損をする。思い切って破く? それはなんだか可哀想。辰哉くんが悲しむ姿が目に浮かぶ。
結局私が思い浮かんだのは振り切ってしまうことだった。私を本気にさせて、後悔するがいい。部屋着からチャイナ服に着替える。全身鏡に映る自分はどこか物足りない。メイクだ。ヘアアレンジだ。念には念を入れる。このチャイナ服……チャイナドレスに似合うように妖艶になってやるんだ。
40分ほど時間をかけて、私は準備を終えた。深い赤のリップが唇を彩る。リビングのドアを開ける。思ったより時間がかかって暇になったのか、辰哉くん最近ハマっている魔法学校のゲームを始めていた。華奢な両肩をポン、と叩く。
『終わったよ』
「時間かかった……」
ね。辰哉くんは目を丸くする。
「お、お前……」
『スイッチ押したのそっちだからね』
「それはずりいって……」
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2023年3月27日 21時