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プライベートな辰哉くんの声はテレビや舞台、YouTubeで見るよりもずっと柔らかくて低い。寝たふりのつもりなのに自然と眠気を催す。
「4年付き合ってくれてありがとな」
辰哉くんは私が起きているとも露知らず、静かに独り言を呟く。
「俺、お前のおかげで変われたと思う」
彼氏や夫に“お前”と呼ばれるのが嫌な女性は沢山いる。私もその1人だ。でも私は辰哉くんに限って好き。そこに見下しの感情がなく、親しみが込められているように思う。
「付き合う前も付き合ってからも、本当に色んなことがあっただろ？ 数え切れないくらい悩んで事務所辞めようとも思った。
いつまで経ってもデビューできないし、俺もしかしたらアイドル向いてねえのかなって何回も思った。普通に働けば良かったなとか、もっと真面目に大学に通って就職してたら不安な気持ちも少しは減ったのかなぁ……とか。こう見えて色々悩んでたのよ」
知ってる。辰哉くんがアイドルを辞めようか本気で悩み、契約解除通知書という、企業でいう退職届のようなものを書いて出そうとしていた。
それをSnowManのメンバーに止められていた。当時はまだ6人だったからなべしょーや舘さん、阿部ちゃんやさっくん、そして照が一生懸命説得して引き止めた。もし手に負えなかったら最終手段で滝沢さんが出る予定だったらしい。
「でも辞めなくてよかった。諦めなくてよかった。今すんげえ幸せに仕事できてる」
だから充実した仕事姿を見られると嬉しくなる。
「もし辞めてたらお前とも付き合えてなかった」
辰哉くんは噛み締めるように呟いた。
「俺さ、本気で結婚してえのよ。時間かかってもガチで。絶対。100パー」
どうやらSnowManの中で話題になっているらしい。ふっかは結婚するのが先か、車の免許を取るのが先か、と。さすがに車の免許が先だろうと思っているけれど、中には結婚が先だと思う人もいるらしい。
「いつになるか分かんねえけど、これだけは渡してもいいかな」
人の気配が薄れる。辰哉くんは私から離れたようだ。少し時間を置いて再び気配が近づく。
「起きるなよ〜……」
私の左手を取り、何かを着けている。指にひんやりとした感触がある。
「……よし。ピッタリ」
どうやら私は指輪を嵌められたようだった。
「Aに似合うように選んだんだよ。ペアリング」
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年3月27日 21時
