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廿漆 ページ30

健全なる初デート

私の隣にいる無一郎は
私の手を引き、私のペースに合わせて歩く

任務での恋人ごっこでもこんな手厚い対応はなかった

それが今 叶っている

甘味屋へ行き、雑貨を見て、また隣を歩く

これをデートと言わず何と言う


人とぶつかりそうになれば
さりげなく手を引きぶつからないように誘導

私が少しでもいいな、と思い見つめていれば
その場で立ち止まり一緒に見てくれる

ドキドキして一生分の脈を打ったのではないだろうかと思ってしまう


だけど楽しい時間はイメージと反して無情で
時は早く過ぎ去ってしまう

空を見上げれば強い赤と霞のような際どい青がグラデーションの様になっていた

帰る時間


昔からこの時間だけは好かないのだ

人が過ごす昼の時間と鬼の過ごす夜の時間の境目

私と無一郎を引き剥がしてしまう時間


そんな事を思っていればいつの間にか甘露寺邸の門の前に着いていた

そろそろ別れなきゃ

そう思い放そうとするが、思いの外私の体は正直で
無一郎と繋いでいる手に力が篭る

あれ? 何でだろ?と自分でも困惑する

子供じゃないのだからもっと聞き分けよく

まだ子供だった頃の私の方が聞き分けよく家に帰っていたでしょう

何度、心の中でそう言い聞かせるものの私が無一郎の手を放すことはなかった

そんな私の事を無一郎は黙って見ていた

彼が「バイバイ」とか「放して」と言ってくれれば
素直に放せるのに

それがわかっているのかいないのか
彼はこちらをじっと見ていた

その瞳に見つめられ、自然と私の視線の先は無一郎の瞳となる

綺麗な水色の霞がかった瞳を見ていると
ふと、昔の別れ際の事を思い出した









___まだ二人と遊んでたい!

___そんなこと言ったってもう暗くなる 帰れ

___うぅ…有一郎の意地悪ぅ…


___A また明日遊ぼう?
  だから今日はもう帰ろう

___無一郎…本当? また遊んでくれる?

___うん ねぇ兄さん

___あぁ だからもう帰れ

___! じゃあ約束ね!






あぁ…そっか

あの時の聞き分けが良かったのは“また”が約束されていたから

“また”…今では軽々しく約束できない言葉


『ねぇ 無一郎 “また”逢ってくれる?』


正直ダメ元で言った

そんな言葉に彼は


「うん」


そう言って手を放した

この約束を待っていたかの様なタイミングで

廿捌→←廿陸



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美穂(プロフ) - 突然終わってしまって寂しいです (2022年4月25日 20時) (レス) @page44 id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
いちごぱふぇ - あああーーあああーーあああーー......好きです (2020年7月18日 2時) (レス) id: e2dd6d7f46 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - この作品はとても面白く一気に読ませていただきました!作者様の次の更新とても楽しみにしております! 頑張って下さい!応援しています (2020年3月10日 18時) (レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
さきいか(プロフ) - 読みやすいです! (2020年1月21日 7時) (レス) id: 4e87d4f1f5 (このIDを非表示/違反報告)
白米 - 好きです (2019年10月16日 0時) (レス) id: f989566248 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:智菜 | 作成日時:2019年9月16日 21時

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