【鬼滅の刃】恋に溺れた人魚姫【時透無一郎】

廿陸 ページ29

自分でも思いの外冷たく放ってしまった言葉

初めて感じるこの胸のつっかえに感情を切り替えきれないまま
落とした言葉彼女の傷ついた顔を作り上げた


『ぁ…うん…』


今にも泣きそうなのに上へと引きつる口元

彼女のそんな顔を初めて見た

いつも笑顔なAからは想像も付かない下手くそな笑顔


それが僕が傷つけてしまったのだと物語る

良心に刃が立ったような感覚

焦燥感に駆り立てられ俺は頭を抱えてひとつ息を吐く


『…無一郎？』


そうすれば彼女は心配そうに僕の顔を覗く


さっきまで泣きそうだったのに僕の心配？

馬鹿にも程がある…


だからこそなのか

それこそ関係ないのか


「ごめん 苛ついてて
よくわからないけどAには笑ってて欲しい
でも辛い時は言って 無理しないで」


守りたくなった

握る掌から伝わる彼女の脈が速くなる

顔を真っ赤にした彼女は驚いたような
嬉しそうな、愛おしそうな表情は俺の視線を掴んで離さない


『ぅん…』


強く握った手

想いを返すように彼女も握り返した

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