廿弐 ページ25
恋柱の屋敷に行って
彼女の弟に事情を話せばAの部屋へと案内してくれた
「Aさんお客様です」
『…私にですか？ 整えて行きますので客間に通しておいて下さいませんか？』
思いの外低い声
いや、声は変わらないが俺の知る彼女の声のトーンが違った
襖の向こうだからそう聞こえるだけだろうか
「あ、いえ 今ここに…」
「整える必要ないから入るよ」
『えっ？』
元からそのつもりだったし
彼女に有無を言わせるまもなく襖の戸を開ける
素っ頓狂な声が聞こえた
そして開けて見た彼女の顔も素っ頓狂だった
『むい…無一郎！？ え、！ お客様って…え！？』
何だかいつもと雰囲気が違う彼女
いつもニコニコと笑顔だったから、こんなに困惑しているのを見るのは初めてだった
どうしよう、と四方八方わたわたとしていたが
今更取り繕っても無意味だと悟ったのか
また何時もの笑顔に戻って『どうしたの？』と言う
「これ あげる」
そう言って持っていたものを差し出す
その手の下に両手で受け皿を作る彼女の手にぽとっと落とした
『これ 髪飾り？ かわいいっ』
花がほころぶような自然で温かい笑顔
それを見た瞬間キュッと胸がなり、目を見開いた
あれ？ なんだろ これ
『ありがとうっ』
先ほどの小物屋で買った飾り紐も両手で包み込むように抱きしめていた
そんなに大事にしなくても誰も取りはしないのに
だけど悪い気分ではない
「それ着けて 出掛けるよ」
『え？ 出掛ける？』
「うん 問題ある？」
キョトンとした顔
それを数秒した後『ない！ 客間で待ってて すぐ着替える！』と嬉しそうに言っていた
なんだ あっさりと出掛ける誘いに乗ったではないか
そう思いながら恋柱の弟に客間に案内されて彼女を待っていた
「貴方が…Aさんの想い人なのですね」
待っている間、恋柱の弟にお茶を出す際言われた
なんで知ってるの？ と思った矢先に
Aが俺のことをよく話すからと説明を付け足された
「貴方に会うたび…合わなくても
Aさんはあなたの事を楽しそうに話すんです」
「…はぁ」
何故 今その話をするのか
する意味はあるのだろうか
そう思いながら僕はポツリポツリと語る彼の話を聞いていた
その言葉の端々に彼女を想っている事がわかる
血縁とは恐ろしいもので 恋柱と一緒でとてもわかりやすい
だけど俺はそれを気分良く聞けることはなかった
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美穂(プロフ) - 突然終わってしまって寂しいです (2022年4月25日 20時) (
レス) @page44 id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
いちごぱふぇ - あああーーあああーーあああーー......好きです (2020年7月18日 2時) (レス) id: e2dd6d7f46 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - この作品はとても面白く一気に読ませていただきました！作者様の次の更新とても楽しみにしております！ 頑張って下さい！応援しています (2020年3月10日 18時) (レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
さきいか(プロフ) - 読みやすいです！ (2020年1月21日 7時) (レス) id: 4e87d4f1f5 (このIDを非表示/違反報告)
白米 - 好きです (2019年10月16日 0時) (レス) id: f989566248 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：智菜 | 作成日時：2019年9月16日 21時
