SOSのサイン_10 ページ46
必死な様子で駆け寄るAは、
景光に抱きしめられて泣いている優也の姿に戸惑い、萩原や降谷、そして優也の肩に手を乗せている松田に視線を向けた。
彼らの表情に不安げな様子を見せるも、
大事な弟が見つかったことに少しだけ安堵したように目元を緩め、優也に近寄るA。
『優也...?』
「うっ、…うっ…、あ…ぁ…っ」
そうして、Aの姿を認めた直後、
優也は大きな声で嗚咽を漏らし始めた。
『ゆ、優也...!?…な、何が...』
焦った様子で優也の顔を覗き込んだAだが、
優也自身も、そして、
さりげなく優也から離れた松田も景光も、
重い表情で言葉を探しているように口を開かないままだ。
『優也、…どうしたの、何があったの?』
嗚咽を漏らしている優也に、不安げに声をかけるA。
「少し前に、警視庁に向かおうとしているところを...見つけたんだ。
捜査一課の刑事に、話を聞きにいくところ、…だったんだろう?」
静かに、そう口にしたのは降谷だった。
その重い影を湛えた読めない表情に、Aは、降谷と優也の顔を交互に見つめた。
『刑事に…?え、で...、でも…』
Aはそこで言葉を途切らせた。
そんなことはどうでも良いのだ。
どうでも良くて。
ぐちゃぐちゃな思考から我に返ったように、
涙で目を濡らす優也をじっと見つめると、
Aは大きく顔を歪めて、彼の身体を抱きしめた。
『…良かった』
再び、大きくなった優也の嗚咽。
そうして、
弟と同じように涙を流したAを、降谷たちは複雑そうにほんの少し口元を緩めて見つめていた。
その時、
「どうしましたか!?」
知らない男の声が、降谷たちの肩をビクリと震わせた。
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作者名:white12 | 作成日時:2023年1月21日 15時