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ざわめく新年_5 ページ5

「…言ったことを取り消せるとは思ってない。
でも、…疑われてた過去があって、警察学校に何の問題もなく入って警察官を目指してるお前に、…ムカついた。
ハッキリ否定も...して来ねえし、大して言い返しても来ねえし」

『...』

「俺は、…万が一でも疑われたりしないように、事件や犯罪者に関わらないようにって、
…制限され続けて、でも、兄貴はアメリカに言って好きなことやってて、
親父は相変わらず厳しくて」


とりとめもない斉木の言葉に、Aの瞳がじわりと歪み、滲んだ。


「…言い訳、したいわけじゃない。
許されるとも思ってない。
でも、ごめん。…悪かっ──」


パシ…ッ



斉木の謝罪の言葉は、乾いた音にかき消された。
その直後、パサパサッと、舞い落ちるように彼の足元に何枚もの紙が散らばった。





思わず左頬を押さえた斉木の目の前で、
右手を高く上げたAは眉を大きく歪めて目尻をじわりと濡らしていた。

書類を手にしていたことなど忘れ、
彼の頬を、思い切り叩いたのだった。




モゴモゴと小さく唇を動かすものの言葉は発さず、
斉木を強く睨みつけて、思い切り唇を噛み締めている様子のA。
その肩は、小さく震えていた。





そうして、ざわめき始める周囲の声が聞こえてか否か、




『…ッ──』



パッと我に返ったようにその場を走り去っていった。




「あ...!」
「桜庭さん!!」



すぐに追いかけようとする降谷と諸伏。
しかし、彼らの視線の先には、既に何メートルか先を走っていく松田の姿があった。

複雑な表情で小さく頷き、彼を追いかけることはせず散らばった書類をかき集め始めた萩原。
降谷と諸伏も松田を視線で追いかけただけで、顔を見合わせて頷くと、それを集めるのを手伝った。



「あー、まぁちょっとした口喧嘩みてぇなもんだろうなぁ?」


などと戸惑う生徒たちに苦笑いを向ける萩原。
桜庭という名前が報じられているからといって、
Aが事件の被害者であると明確に知っている生徒は少ない。

彼の様子に周囲のざわめきが少し穏やかになる中、萩原はすっと真剣な顔をして斉木を見つめた。


「…辞めんのか?」


萩原が聞きたかった言葉を口にしたのは、険しい表情を浮かべたままの伊達だった。

斉木は何も言わず一つ頷きを返しただけで、
赤くなった左頬から手を離し、ボストンバッグを抱えて力ない足取りで去っていった。

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作者名:white12 | 作成日時:2023年1月21日 15時

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