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笑えねぇ冗談_9 ページ36

警察の上層部への疑いが報じられた後、
週刊誌だけでなく、新聞やテレビ局の記者が警視庁周囲に来ることも多く、
警察学校生がマイクを向けられることも少なくは無かった。

そんな状況にも苛立ちはしていたものの、
木下のように桜庭Aのことを、それも、彼ら週刊誌側の意図が大きく入った"取材"に、
松田も萩原も納得できるはずもなく。





「どうすりゃ良いんだろうな。…ここにいるとも分からねぇし。
諸伏も言ってたみてぇに、そもそも事件のことは、…俺たちに出来ることなんて…多分ねぇよな。
斉木をぶん殴るとか、…そういうことでもねぇだろ」

「今更斉木をどうしてぇとか思ってねぇし、...そもそも、アイツ自身が引っ叩いただろうが。
何かしてぇとか…、そういうんじゃねぇよ」


声を少しずつ小さくしながら、松田は腕を組んで身を丸くした。


「あの木下って男がどうとか、桜庭がここにいるかもとか、…別にそういうことじゃねぇ。
俺がいてぇからいるだけだ。萩は帰ればいいだろうが」



あまりにも分かりやすい言葉に、わざとらしく大きなため息をついた萩原。
目の前にいる男は、葛藤に塗れた、まるでひねくれた大きな子どものようで。
でも、その心情は痛いほど理解できて。


ふぅ、ともう一度吐き出した萩原の息は白く、紫煙のようにふわりと昇っていった。



「...タバコでも買ってくっか」

「...問題起こすと、っつったのは萩だろうが」

「う...わ、陣平ちゃんが降谷ちゃんみてぇなこと言ってる...」

「ぶん殴るぞ」


そんな適当なやりとりをした後でふと口をつぐんだ松田たちは、
吹き抜けた冷たい風に、同時に肩を小さくした。
問題を起こすというよりも、Aのことを考えて言ったつもりだったはずの萩原だが、
それは当然だと思っているのか心ここにあらずなのか、
その口から珍しい言葉を漏らした松田を、仕方ねぇなという表情で目を細めていて。




それから2人は、
辺りがすっかり暗くなるまでその場で言葉少なに佇んでいたのだった。

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作者名:white12 | 作成日時:2023年1月21日 15時

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