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ざわめく新年_4 ページ4

『…ッ』



その姿を見てピタリと足を止め、
唇を噛み締めるようにじわりじわりと表情を歪め始めるA。
彼女が手にした書類が、クシャリと掠れた音を奏でた。




一瞬足を止めたものの、より焦った様子で彼女たちに近寄る降谷と松田。そしてそれに続く景光たち。


ただ、1秒足らずで再び思わず立ち止まることになった。


「ごめん」


そんな斉木の声が聞こえたからだ。
斉木は、大きなボストンバックを肩から下ろし、Aに頭を下げていた。



『…え──』


表情を歪めていたAは、面食らったように小さく口を開けていて。
周囲の生徒は、
事情が分からず不思議そうにその様子を見つめていた。



「…ごめん」

『…』

「…まさか、兄貴が…あんなこと」


斉木の言葉を聞きながら、再び苦しげに表情を歪めたA。


「…それに、親父が...」


Aは、ギリ、と、砕け散るほど強く奥歯を噛み締めた。
その右手は、強く握り絞められ、手のひらには爪が思い切り食い込んでいた。



「…俺は、何も知らなかった。
でも…、刑事には話したけど、
…あの事件があって、兄貴が急に…アメリカに行ったり、…おかしなことはあった気がする」

『…』

「親父には、
“警察官の息子らしく、絶対に犯罪には関わるな。
…どんな小さなことでも、罪になるようなことはするな。
犯罪者やその関係者とは、絶対に関わるな”って…、
小さい頃から言われてきたけど…、
兄貴がアメリカに行ってから…、
なんか、…前より厳しくなったっていうか…」

斉木は、懺悔のつもりなのか、自分の状況や感情を整理できていないのか、
何も言わないAにそのまま話し続けた。


「兄貴は、警察官になるつもりがなさそうだから、…と思ってた、...けど。
でも、…ちょっと素行が悪いって噂を聞いただけで、…友達とは縁を切れとか、
なんていうか、…今思えば過剰だった。
兄貴の話もほとんどしなくなってたし…」

『…だから、何ですか。
代わりに、謝りたいってこと…ですか?』


静かな、深い怒りを携えたようなAの声が漏らされた。



「…ち、違う。…そうじゃ、なくて。
そうじゃ、ないことも…ないけど」

『…』


複雑そうに、
しかし、割り込むべきではないと、
降谷たちは理性的に、松田だけは本能的に理解し、彼らの様子をその場に立ち止まって見つめていた。

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作者名:white12 | 作成日時:2023年1月21日 15時

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