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乱暴な足音_2 ページ27

「…ふざけんじゃねぇぞ」


砂を蹴る音に混じり、ドスの効いた物騒な呟きが低く響いた。


「…そういや、陣平ちゃん。桜庭ちゃんは今、弟くんと都内のホテルにいるって言ってたよな。
場所は聞かなかったのか?」

「知らねぇよ」


苛立ちを吐き出すように答えた松田は、


「…んなんだよ。ふざけんな」


と、萩原を見ることもせず走るペースを上げた。




年の瀬のあの日、
警視庁に事情を聞きに行くと、まるで殴り込みにでも行くような表情の松田に、
Aは静かに首を振った。
事情を聞きにいったところで、連行したばかりの人物について何か聞き出せるはずもないだろうと、
やけに冷静に状況を判断する彼女に、
松田は小さな苛立ちを覚えながらも、明日、改めて話を聞いてみるという言葉にしぶしぶ頷いた。


帰りの電車に共に乗り込んだ2人だが、
送っていくと言った松田の提案は、当然の如くAに断られてしまい。
ホテルの場所も、駅の名前を口にしただけで誤魔化されてしまっていた。


”私は、大丈夫です”と、その駅で降りたA。
いつもの言葉を聞いた松田は、
苛立ちや色々な感情がとっさに湧き起こり、ホームの人ごみに消える彼女をそのまま見送ってしまったのだ。


「…自己犠牲も──」


"良い加減にしろよ"と続きそうなその言葉は、松田の口からそれ以上漏らされることはなかった。
代わりに、その足元で響く掠れた音が乱れた乱暴なものに変わっていて。

背中からも分かるほどの松田の荒れた雰囲気を感じながら、
ペースを上げて走っていく松田の背中を複雑そうに見つめる萩原たち。



「...こっちは、"大丈夫"じゃ、...ないよな」


先ほどの松田の言葉を引き継ぐように、景光がボソリとつぶやいた。



変わったようで変わらない。

状況は大きく変わったものの、何も出来ない状況は変わらない現実を突きつけられたようで、
彼らが吐き出したため息は、いくつもの足音に染み込んで消えていった。

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作者名:white12 | 作成日時:2023年1月21日 15時

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