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別れは突然に_8 ページ22

「…俺は、…俺たちは、結局何も出来てないだろ。
まだ警察学校生の俺たちが何も出来ないことは分かってるけど…。でも…」


振り向いたAの目に映ったのは、悔しそうに表情を歪めて搾り出すように言葉を吐く景光だった。
そこで言葉を途切らせて、何かを訴えるようにAを見つめる景光。

Aは何も言わず、ただ、ゆっくりと首を振った。
そんなことはないと、ただ、伝えたかった。


そうして、似たような表情を浮かべる降谷と萩原の視線も受け止めながら気にしていたのは、
その少し後ろの、横顔だけを見せている松田のことだった。


「犯人は…捕まったのかもしれないけど、でも、…まだ解決した訳じゃ、…ないだろ。
優也くんもそうだけど、桜庭さんだって──」

『ありがとうございます』

静かに、景光の言葉が遮られた。


『皆さんには、本当に、…何度も助けて頂きました。
私は、…大丈夫です。…ありがとうございます』


“でも君はやっぱり、大丈夫だって、そう言っちゃうんだろうけど”

つい先日、彼女に言った言葉を思い出して、グッと奥歯を噛み締めた景光。


軽く頭を下げて再び立ち去ろうとするAを引き止める術も、その必要もなく、
悔しさや心配や、苛立ちが混ざり合う心情を抑えながら見つめる景光たち。


その直後、
押し黙ったままだった松田が彼女の腕を乱暴に掴んだ。


『え…』


引き止められるように後ろから掴まれた腕に、その反動で身体をくるりと反転させたA。

目の前の背の高いその男は、
とても、不機嫌で無愛想な顔をしていて。
Aはなぜか、思わず泣いてしまいそうになって、
ゆらりと揺れた感情を見ないふりして静かに首を傾げた。



何か言いたいことでもあるのかと言わんばかりに首を傾けているAの腕は、
コートの上から掴んでいるにも関わらず、ほっそりとしていて。
霙が舞い散る中、握りしめた彼女の震えた手を思い出しながら、
何も言わないままで眉をさらにひそめた松田。




『…あの──』


「…”大丈夫”だっつっても、俺が…、”大丈夫”じゃねぇん──」


「あ、…桜庭Aさん、ですよね」



松田のボソリとした低い声に思わず表情を変えたAだが、
それは別の声に遮られた。



降谷たちの後ろから近づいてきたのは、見慣れない男性だった。

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作者名:white12 | 作成日時:2023年1月21日 15時

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