雨空に桜色の花びらを (8) 【名探偵コナン/警察学校組】 (ページ16)

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別れは突然に_2 ページ16

『…運んで、…くれた？』

寮のベッドに寝ていたことはそういうことなのだろうかと、
力無い表情のまま困ったように眉を垂れたA。
机の上に置かれた時計を見ると、5時半を少し回ったところで。
カーテンで遮られた窓は、ほんの少し明るくなり始めていた。

『え…、う、嘘...』

時計はデジタルだ。
つまり、夕方ではない。

記憶が正しければ、朝の訓練が終わった後、
教官室に行こうとして斉木にバッタリ出会したはず。

その後、大きく感情が揺さぶられ、おそらくそのまま眠ってしまったのだとして、
ゆうに半日以上寝ていたことになる。

どうりで頭がぼんやりするはずだ。
しかし、随分と久しぶりに何も考えずに眠っていたのも事実で、身体がとても軽くなったようで
思わずキュッと一度強く瞬きをしたA。

すぐさま焦ったようにポケットを探ると、無機質に点滅するスマホのLEDが目を刺激した。

『優也…』

昨日はホテルに戻るつもりで出てきたのだ。
優也が心配しているはずで。
素早くディスプレイを動かすと、そこには数件の不在着信、そしてショートメールが2通入っていた。

メールは目暮からのものだった。
「警察学校で体調を崩して寮で休んでいると聞きました。優也くんにも伝えておきますので、ご心配なく。お大事にしてください。」という旨の連絡だった。

もう1通は優也からで、
Aの体調を気遣う文面に、俺は大丈夫だから心配しないで、と添えられていた。

ディスプレイを眺め、心配そうにそわそわと落ち着かない様子で肩を揺らしたAは、
部屋の隅にある大きなカバンを取り出し、作業をし始めた。