サンタクロースに願うのは_9 ページ9
斉木の兄を目の前に、何も出来ない自分が“悔しい”と言っていた昨日。
Aはきっと、
悔しさや怒りが渦巻く感情で苦しんでいるのではないかと、
病院であの男を取り押さえた時の、静かな怒りを纏ったような彼女の姿から想像していただけだった。
ガバッと思わずベッドから立ち上がった松田。
「っ……と」
驚いて反射的に体を退けらせ体勢を崩した萩原の腕を、松田が瞬時に掴んだ。
「悪ぃ」
「いや…」
「…ってか、萩はその足、大丈夫なのかよ」
「昨日から何度も言ってるだろ。大したことねぇって」
Aのことはもちろんだが、
事故に巻き込まれて怪我をした親友への心配も大きくて。
こんなことは今まで無かったわけでもなく、
骨に異常はないらしいことは理解しているものの、それでも大事な親友のことだ。
松田は、色々な感情を上手く整理できず、チッとお決まりの舌打ちをこぼした。
「病院、行くんだろ?陣平ちゃん」
「は?」
「桜庭ちゃん、たぶんあのまま弟に付き添って帰ってねぇんだろうし」
含みのある表情で、
合図をするかのようにほんの少し目を細めた萩原。
思わず立ち上がった松田の心情をいとも簡単に読み取ったかのようで。
「事情聴取呼ばれてっから、とりあえず警視庁に行ってから…だけどな」
無愛想な松田のその台詞には少し柔らかい吐息が混じり、その、どこかアンニュイな雰囲気に萩原は複雑そうに小さく笑ったのだった。
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作者名:white12 | 作成日時:2022年11月2日 20時