霙に溶けていくような_4 ページ46
『…大丈夫です』
「あのなぁ──」
『…"もうすぐ、終わらせる”』
「…は？」
何の脈絡もなく、少しためらった後でそんな言葉を漏らしたA。
『目暮という刑事さんが、…言ってたんです』
「…目暮？…あぁ、あの捜査一課の」
そうして、Aはポツポツと話し始めた。
優也のことが心配で、先日の事件があってからは病室からはほとんど離れることが出来なかったこと。
それでも、病室やその周囲に現れる刑事を見つけては捜査状況をしつこく聞いていたこと。
優也の病室に現れたあの男は、優也の証言からも、両親を殺した男に体格がとても似ていたこと、
そして、あの日Aが家の近くで見かけた2人組の男の1人もまた、よく似た体格をしていて、
黒子やアザの特徴が似ている斉木の兄のことのことも含め、
刑事には何度も証言をし、事件に関係あるのではないかと、調べて欲しいと何度も相談していたこと。
そうした中で、昨日の夕方。
捜査一課の目暮と小嶋が、優也の病室を訪ねてきていたのだ。
肉体的、特に、精神的にまだ心配な状況であることは理解しているが、
一時的にでも優也を退院させ、居場所を変更するように相談されたA。
それは、男に襲われかけたというあの事件を踏まえて、
警察の不備を少なからず認めるとともに、
まだ事件が完全に解決していないことで、優也の身の安全を鑑みたことだとのことだった。
そうであれば、すぐにでも居場所を変えるべきだったのではないかとか、
男の取り調べはどうなっているのかとか、
聞きたいことは山ほどあったものの、目暮と小嶋の真剣な様子に、Aはそれに従い、
今朝方、優也とともにホテルに移動していたのだ。
そして、当時の記憶や優也の証言をもう一度訴え、
捜査状況について聞こうとしたAに、
目暮は厳しい表情で、
"必ず、解決します。
もうすぐ、…終わらせますから"
と、言ったのだ。
「…終わらせる、…って」
話を聞いた松田は、訝しげな表情で呟いた。
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作者名：white12
| 作成日時：2022年11月2日 20時
