姉弟ゲンカ_10 ページ32
「松田と何があったのかは分からないが...、
捜査状況は相変わらずなのか?
僕も2度事情聴取に警視庁に行ったんだが…」
すっと話を遮り本質に降谷が切り込むと、Aが少し間を置いて首を縦に振った。
そうして、周囲に2名ほどいる警官の存在を気にするような素振りを見せ、
病室に入るように彼らを促した。
『…すみません。誰に聞かれるとも分からない場所で立ち話をするのも、と思いまして』
「いや…」
「取り調べは続いているようですが、逮捕起訴には至っていないようです。
先日の事件は現行犯ですから、すぐに動きがあっても良いと思うのですが、
自供を取れていないのか裏どりに時間がかかっているのか、…何か問題があるのかは、分かりませんが』
「それは──、君の家族の…事件と関係があるから、とも考えられるな」
『…そう、ですね』
“何か問題があるのか”
含みを持たせてそう言ったAは、降谷に短く返事をしただけで口を閉ざした。
少し前までどこか不安げに時折揺れていた眼差しは、いつの間にか冷たく強いものに変わっていた。
「弟さんの様子は…?
ちっと喧嘩してたみてぇだけど、そりゃあんなことがあったんだもんな。
3年前、…もうすぐ4年になるのか?あの事件のこともあるし、…なんつーか、精神的ショックも大きいんじゃねぇかって。
桜庭ちゃんも...同じだろうけど」
『…男だからっていうのもあるのかもしれませんけど、
優也はあまり表には出さないんですが…、夜はあまり眠れてないようで。
この間の事件が起こる前から…それは同じなんですけど。
両親の、あの事件を思い出してしまうんだと思います』
萩原の問いに答えたAは、唇を小さく震わせていた。
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作者名:white12 | 作成日時:2022年11月2日 20時