姉弟ゲンカ_6 ページ28
ハッと優也に目を向けたAだが、じわりとその睫毛が揺れた。
彼女の手が小さく震えているのに気付いた萩原は、
「警察のやつについてきて貰うとか聞こえたけど、…1人で行っちまうぞ。
それに、アイツらだって信用できねぇだろ」
と、少し不安定な身体を動かして彼女の手に自身のそれを軽く重ねた。
“アイツら”
それは警察官のことを指しているのは明白で。
その言葉だけ語気を強めたような言い方に、
ふと昨日の松田を思い出しながらAはゆらっと視線を上げた。
焦りの裏にある大きな不安の影を表すかのように、彼女の目元には暗い影が落とされていた。
「大事な弟なんだろ」
心配そうな顔をする降谷や伊達の間からするりと彼女の手首を掴んだ景光。
そうして、重なった萩原の手から奪い取るようにして、強引にAをつれて優也を追いかけた。
「も、諸伏…!」
「ヒロ!」
小走りに優也を追いかけていく2人を見つめ、降谷は複雑な表情で、
(ヒロらしい…な)
と心の中で呟いた。
「姉弟ゲンカ…、っていうのもちっと違うみてぇだな」
「まぁ、諸伏ちゃんもついていったし、…大丈夫だろ」
単純なものとも言い難い様子に眉をひそめた伊達は、
萩原の言葉に数回小さく頷いた。
163人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:white12 | 作成日時:2022年11月2日 20時