姉弟ゲンカ_4 ページ26
「前にちっとだけ陣平ちゃんからも話聞いてたんだけどよ。
あくまで推察の域は超えねぇってのは事実で、確かに当事者は関われねぇのもそうなんだが…。
…まぁ、被害者家族であっても必ずしも捜査内容を知ることは出来ねぇだろうし、
身内だからっていう風に言われたとしても、
実際は1つの重要な証言として捜査が動いてんのかもしれねぇけどよ。
俺もちっと違和感があるっつーか、…な」
萩原の言う違和感というのは、
言葉通りの意味でもあり、
やはり、刑事からそんな言葉を返されたAの心情を考えてしまうからでもあった。
「で、萩原はこのまま帰んのか?」
「こっちの方がおまけかもしれねぇんだよな」
ひらひらと、怪我をした左足を宙で揺らした萩原。
手には松葉杖を持ってはいるもののそれはほぼ地面についておらず、左足も軽く地面についていて。
順調に回復してきていることアピールするように、萩原はニヤリと口角を上げた。
遠回しな言い方をしてまるで当然のように優也の病室の方へ歩いていく彼を、
伊達は軽く苦笑いをして追いかけた。
「…お?」
「ん?」
「「あ…」」
優也の病室を目の前に、同じタイミングで立ち止まった伊達と萩原。
それは、彼らの目線の先にいた人物たちも同じで。
「降谷たちも来てたのか」
「班長もか。…萩原は足の診察か?」
ちょうど向かいから歩いてきたのは、降谷と景光だった。
「さっき終わったとこだ。どっちかってーと、俺としちゃこっちの方が…大事でもあるんだけどな」
苦笑いをして片方の口角を上げた萩原。
口角を上げた側の目元が同時に細められてまるでウインクをしているような表情に、降谷と景光がフッと息を漏らした。
その時──
「..──だって…──!」
『それは──…、でしょ』
2つの声が彼らの耳に入ってきた。
その一つは聞き覚えのあるAのもので。
自然に病室のドアに近づく4人。
「…でも、…──って、体力も戻したいんだよ」
『だから、一緒に行くって言ってるじゃない』
「1人で大丈夫だから」
『…あんなことがあったばかりでしょ!』
Aのどこか必死な声色と、
部分的に聞こえてきた話の内容から事情を察したかのように降谷たちは顔を見合わせた。
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作者名:white12 | 作成日時:2022年11月2日 20時