姉弟ゲンカ ページ23
翌日の12月26日。
警視庁から少し離れたクリスマスムードがまだ少し残る道に、松葉杖を片手に歩く萩原がいた。
痛みはかなり減ってきているが、普通に歩くのはまだ無理といった状況で。
「しかし、休みの間にそんなことになってたとはな。萩原は怪我してるしよ。昨日教官からも事情を聞いてびっくりしたぜ」
萩原の隣では、班長である伊達が険しく眉を寄せていた。
「まぁ、俺は大したことはねぇんだけど」
「で、昨日、途中で松田がいなくなったのは…」
「…あぁ。やっぱり、病院行ってたみてぇだな。
松田の奴なんか苛立ってたみてぇで、あんまし話聞けなかったんだけどよ」
似たような顔で目を細めて苦笑いをする2人。
萩原が”松田”と呼ぶのはその多くが真剣な話をするときで、表情にも彼の複雑な心情がよくにじみ出ていた。
昨日。
12月25日という、世間は色鮮やかな飾りに包まれて少々浮き足立つような日は、警察学校の清掃日だった。
生徒全員での清掃ではもちろん松田をはじめ、皆で作業をしていた伊達班の5人。
午後に入って少ししたところで全体の作業が終わり、教官の挨拶を通し、今年の警察学校での訓練や作業は最後…になっていたのだが、その後、鬼塚教官から新書の納入や本棚の整理など図書室での作業を任されていた。
人命救助に貢献したり、結果的に犯人逮捕につながったりと、評価されるべきところもあるゆえいくらかのペナルティで済んでいたものの、度重なる問題行動で教官たちの頭を悩ませてきた5人はそう簡単に解放してもらえる訳でもなく。
しかし、その作業の途中で松田がいなくなってしまったのだ。
“車だの風呂掃除だの言われたペナルティはこなしてきただろうが…。
…ったく、整理はこんくらいでいいんじゃねぇのか“
などと、ぼやきながらふらっと図書室を出て行ったきり返ってこなかった松田。
警察病院で起こった出来事は、Aの名前は伏せて教官たちから生徒たちに情報周知という形で知らされていた。萩原が巻き込まれた事故についても。
当日はその場にいなかった伊達は話を聞いて事情をある程度理解していたものの、
萩原や降谷、景光がフォローするかのように、「もしかして…」と口を揃えたので、それなりに察して、寮部屋に押しかけて説教するなど深入りはしていなかったのだ。
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作者名:white12 | 作成日時:2022年11月2日 20時