雨空に桜色の花びらを (7) 【名探偵コナン/警察学校組】 (ページ21)

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冷たい空気_7 ページ21

「もう2日経ってんだぞ。警察の奴ら、モタモタしすぎだろうが。
…斉木の兄貴って奴のことも、何も出来ねぇって決まったわけじゃねぇだろ。
はっきり顔は見てねぇにしても、アンタが言ってたみてぇに、弟の証言があって、アンタ自身の目撃証言とも一致するんだろ。
身内同士だからってその証言が軽んじられるのは、違うだろうが」

『…』

「事情聴取の時、ハッキリ言ったのかよ。アイツらが犯人だってよ」

松田には、
自分の考えが怖いと思っていたこと、
斉木の兄に、その身体的特徴だけで疑いをかけそうになっていたこと、
頭の中で推察が勝手に進んでしまうことへの怖さを、吐露していたA。
彼は、その疑いを無理に肯定するような発言はしなかった。
肯定するようで、でも、Aが葛藤して推察にブレーキをかけてしまっていることに理解を示すように、どこか乱暴だけど、寄り添うような言葉をくれた。

でも今は──

『確かに、…松田さんの言う通り、背格好からすれば私が見た男たちと2人ともよく似ていたと思います。
優也も、…そう、…言っていました』

Aは、少し息を乱しながら答えた。
その話をしたときの優也のことを、
震える唇で絞り出すような声で事情聴取に応じていた彼のことを、思い出しながら。

「…んなんだよ。とっとと捕まえろって、なにモタモタしてんだって、言やあ良いだろうが」

『…そんな簡単に──』

「簡単なことだろうが…！」

松田のワントーン大きな声に、ぴくりと肩を揺らしたA。
怒鳴るようなその声は、少し苦しそうな音を含んでいて。

Aは、反論することはなく、
奥歯を噛み締め、目をわずかに揺らしながら松田を険しい視線で見つめていた。

“別に気にしてねぇとか言いながらなんか溜め込んでるっつーか、この世の全ての不幸を背負ったみてぇな顔してる奴”

松田は、以前そんな風にAに暴言めいた言葉を吐いたことを思い出していた。
場所は違えど、屋上という似たシチュエーションだということもあり、
彼女と初めて言葉を交わしたあの日を思い出していたのだが、
あの日のように”嫌いだ”とは、到底思えるはずもなかった。

苛立っているのは事実だ。
しかしそれは、自分の中の苛立ちをぶつけているだけで。
そしてその苛立ちは、あの日と違って、何かを溜め込んでいるようなAが”嫌い”であれば到底覚える必要のない感情で。