サンタクロースに願うのは_3 ページ3
「ちょ、ちょっと…、なんなんだよ。松田もゼロも…」
「陣平ちゃん、…なんつーか、もうちっと分かりやすく言った方がいいんじゃねぇの」
焦る諸伏に肩を貸してもらいながら、
詳しいことは分からずとも、親友の言いたいことを理解しようとする萩原。
「…3年、…目が覚めんのをずっと待ってた弟が、傷つけられそうになったんだぞ。
自分が疑われてひでぇこと言われてても、
それでも、他の奴に迷惑かけたくねぇって、騒ぎにしたくねぇって、1人になるようなやつ…だぞ。
…斉木に胸糞悪ぃこと言われても大して何にも言わなかったやつが、…悔しいって──」
松田は降谷の目を見ることなく、続く言葉の代わりに舌打ちをこぼした。
松田だけが知っていることだ。
“…許せないので”
以前、目を閉じたままの弟を見つめながら、
Aが病室で苦しげにこぼした言葉を、松田は忘れることが出来なかった。
「…だから、彼女の感情に任せてあの男を殺せば良かったとでも、言いたいのか」
ぎょっとしたように目を見開いた諸伏と萩原。
松田が言いたいことをなんとなく察していた萩原とて、状況を理解していた訳ではなくて。
「んなこと言ってねぇだろうが」
「そういうことだろう…!」
「止めようと思わなかっただけだ。
…結局、そういうことにはならなかっただろうが」
チッ。
もう一度溢れた松田の大きな舌打ちは、少し白が混じった吐息と共に、
一層冷たくなった夜の空気に溶けて行った。
「俺は、殺してやりてぇと思う犯人を目の前に品行方正でいられるほど、
優秀な警察学校生じゃねぇからな」
品行方正などという言葉が松田の口から出たことに驚いている場合でもなくて。
“松田”が殺してやりたい犯人というわけでもないはずだが、
彼の言いたいことを理解して、萩原が少し距離のある松田の肩に手を伸ばし、それをポンと軽く叩いた。
「…んだよ、萩」
「何があったのか詳しいことは知らねぇけど…、降谷ちゃんに八つ当たりすんのは違うんじゃねぇの」
「八つ当たりってなんだよ」
苛立つ松田は、聞く耳を持つ様子もなくて。
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作者名:white12 | 作成日時:2022年11月2日 20時