冷たい空気 ページ15
翌日。
警察病院の病室で、
優也は、眉間に小さなシワを寄せてガラス窓の外を眺めていた。
室内ではあるものの、
窓際に立つとひんやりとした空気がわずかに漏れ入ってきて、ふるっとその肩を固くさせた。
視線は階下に注がれていて、思い返すのはもちろん、
2日前の夜のことだった。
「…」
視線を少しズラして複雑そうに唇を歪めた時、
コンコン
ノックの音が聞こえ、背の方へくるりと振り向こうとした優也。
その音がなんだか少し乱暴に聞こえて、
看護師や刑事ではなさそうだと思った矢先、
音が消えたとほぼ同時に、ガラッとドアが開かれた。
「…あ」
直後、優也は軽く目を見開いた。
目の前に現れたのは、今し方頭に思い浮かべていた人物だったからだ。
「は──…?…起きてて大丈夫なのかよ?」
目を細めて怪訝そうな、心配そうな表情を浮かべるその人物に、
優也は少々戸惑いながら、
「えっと...、はい。検査はありますが、身体の方はもうほとんど、問題はないんで…」
と、答えた。
そういうことを聞かれているのではないのかもしれないが、
自身の状況をAが何かしら話しているのかもしれないと、そんなことを考えながら。
名前も知らない人物だが、
昨日、ここを尋ねてきた4人の中にいた男だ。
自身の姉であるAの同期だと、そのうちの1人が口にしていた。
そして、2日前の夜、
Aをサポートするかのようにして抱き抱え、目の前の、――窓から階下に飛び降りた男。
病室内を見回すようにしている姿から、Aに会いに来たであろうことは明らかだった。
「あの、姉ちゃんは今ちょっと…」
「そう…か」
少し含みのある言葉を口にした優也。
「優也、…つったか」
「え?」
「…大丈夫かよ」
ドアの前で立っていた男──、
松田は、小さく眉を寄せて優也にゆっくり近づいた。
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作者名:white12 | 作成日時:2022年11月2日 20時