耳をつんざく警報音_7 ページ40
「悪い。弟…のところに行くんだよな」
『そう、ですけど』
「僕が言うことじゃないのかもしれないが、…大丈夫なのか？」
『え…？』
電車の中でも何か言おうとしていたのはそういうことだったのかと、降谷の言葉にAが訝しげな表情を浮かべた。
「大丈夫…って、ゼロ？どういう意味──」
「捜査一課だかどこかの刑事が...、ちゃんと警備してんのか、ってことか？」
目を細めて疑問を口にした諸伏に対し、
萩原が瞬時にそれに答えるかのように低い声を漏らした。
「…」
似たようなことを考えていたのか、
ゆらりと険しい顔をAに向けた松田。
『事情聴取以外で、見知った刑事を病室の周りで見かけることはあります。
どこまで警備してくれているのかは分かりませんが、
…警察の方にも、看護師の方にも、お願いは...しています。
それに、ここは警察病院です。
顔は知りませんが、警察官のような人を見かけることは...少なくは、ありませんし』
そう言って、Aが表情を歪めた。
3年前のあの事件はまだ未解決だ。
そうして、唯一の目撃者と言える優也が目を覚ましたことは、
捜査に大きな進展をもたらす可能性とともに、
まだ捕まっていない犯人に狙われる危険性も含んでいる。
優也が眠り続けていた3年間に何事も無かったとはいえ、
降谷の言ったことを考えなかった訳じゃない。
ずっと側についていたい気持ちをクッとかみしめるように、Aは唇を噛んだ。
Aは、
唯一の家族となった優也を何よりも優先したい気持ちと、
犯人を自ら捕まえてやりたい怒りと憎しみとの間で苛まれていた。
今でも警察学校生を辞めないのは、そういう葛藤があるからだ。
それでも、やはり、
もしものことがあったらと改めて冷静に想像したAは、
すぅっと身体が冷えるのを感じ、足早に優也の病室へと向かった。
「あ…、桜庭さ──」
思わずそれを追いかけようとした降谷の横を、1つの影がするりと通り過ぎた。
松葉杖が床に転がった音を聞きながら、
降谷の目に映ったのは松田の背中で。
Aと、
一度だけ、目を閉じたままの姿を見たことのある優也という彼女の弟のことが気になり、
松田はとっさに身体が動いたのだ。
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white12(プロフ) - さゆりさん» 嬉しいコメントをいただきありがとうございます。更新が滞りお待たせしてしまって申し訳ありません。また，体調についてもお気遣い本当にありがとうございます。更新頻度がまちまちで申し訳ない限りですが，引き続きお楽しみ頂けると幸いです。 (2022年8月31日 19時) (
レス) id: 5b5db755e5 (このIDを非表示/違反報告)
さゆり - 更新ありがとうございます！これからどうなっていくのかドキドキしています。体調が悪いとおっしゃっていたので、どうぞ無理はしないでお大事にしてください。続きを楽しみにしています！ (2022年8月30日 20時) (レス) id: 2b8084ecea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2022年8月4日 18時
