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くだらないこと_4 ページ1

ごみ箱の缶が奏でた鈍い音が止み、
シンと静まった2人の間に、冷たい風が吹き抜けた。


「…そもそも、捜査中の事件なら、
容疑者が絞り込めるまでは可能性のある人物を全て疑うのは当たり前のことだ。
その過程で犯人じゃねぇやつが疑われるのは、おかしなことじゃ、ねぇだろ。
まぁ、それが、誤認逮捕ってとこまで行ったのはありえねぇけどな」

『…』

「それに、アンタが怖いって思ってんなら、
危ねぇままって訳にはならねぇかもしれねぇって、こないだも言っただろ」

『え…』


「親父んときも、
これで大丈夫かって、この証拠で逮捕すんのかって、
少しでも躊躇うっていうかアンタみてぇに考えるヤツが警察ん中にいりゃ、
あんなことにはならなかったんじゃねぇかって、アンタの話聞いてて…思ったんだよ」


松田は、
苛立っているような、でも、少し納得しているような、
複雑な表情でAに向けて僅かに口元を緩めていて。

Aは、何故かうっすらと涙腺が緩みそうになる感覚を覚えて、
キュッと奥歯を噛み締めた。


「だからといって、アンタの考えが正しいかどうかは俺には分からねぇけどな」

『…』



そうして、ふと、流れた沈黙。
松田は、苦しげに眉を寄せて視線をわずかに揺らがせているAを目を細めて見つめ、


「あんまり、くだらねぇこと…、気にすんなよ」


と、口にした。



『え…?』

「アンタは、…多分、そういうの気にしちまうんだろうけどな。
相手のこと何にも考えねぇヤツよりはずっと良いんだろうけどよ。
でも、アンタが、話すべきじゃなかったとか、俺の親父のこととか、そんなこと気にする必要はねぇよ」

『くだらないことなんて...、そんなことないです。私は...』


少しトーンを上げて反論したAだったが、
それ以上は言葉を続けられなかった。


続く言葉が、分からなかったからだ。

くだらないことだなどと思ってはいない。
でも、どうしたいのかも、分かってはいなかった。





そんなAを見つめたままで、松田は小さく息を吐くと、


「上手く笑えねぇのは無理もねぇとは思うけどな、
…もうちっと…、…なんつーか」


と言いながら、松田もまた上手く言葉が紡げない様子で。

そうして、後頭部を軽く掻きながら、


「…笑ってろよ」


と、小さな声で呟いた。

くだらないこと_5→



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設定タグ:名探偵コナン , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - さゆりさん» 嬉しいコメントをいただきありがとうございます。更新が滞りお待たせしてしまって申し訳ありません。また,体調についてもお気遣い本当にありがとうございます。更新頻度がまちまちで申し訳ない限りですが,引き続きお楽しみ頂けると幸いです。 (2022年8月31日 19時) (レス) id: 5b5db755e5 (このIDを非表示/違反報告)
さゆり - 更新ありがとうございます!これからどうなっていくのかドキドキしています。体調が悪いとおっしゃっていたので、どうぞ無理はしないでお大事にしてください。続きを楽しみにしています! (2022年8月30日 20時) (レス) id: 2b8084ecea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2022年8月4日 18時

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