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見えない姿_2 ページ19

一方。

朝食を終えて面会時間になった警察病院には、Aの姿があった。
もちろん、行き先は優也の病室だ。


病院に来る前、
両親の墓に手を合わせ、優也が目を覚ましたことを報告してきたところで。
手には小さな花束が握られていた。



『おはよう。優也』

「あ…、姉ちゃん。…おはよ」


少し気恥ずかしそうに、軽く目を逸らして挨拶を口にした優也。
朝食は食べ終えたようで、空になった食器が並んだお盆がサイドテーブルの上に置かれていた。



『昨日もちゃんと食べてたし、食欲、あるみたいで良かった。』

「まぁ、一応ね」

『良く眠れた?』


Aの問いかけに一瞬だけ間を置いて、
優也は、


「うん」


と、短い返事をした。


Aは何も言わなかったが、彼の目元を見ればおよそ分かるもので。

疲れたような少し赤みがかったその目を見れば、
やはり眠れなかったのだろうと想像するのは容易いことだった。


そうして、お盆を片付けたり、
花瓶の花を入れ替えたり、しばらくベッドの周りで優也の世話を焼いていたAは、


『あ、…飲み物無かったよね。ちょっと売店行ってくるね。欲しいものある?』

「あー、…えっと、じゃあ──」


昨日、少し話をしていた時間で、
優也の口数は少しずつ増えてきていて、Aは安堵の笑みを浮かべ、
病室を出ていった。





『えっと、…これ、で良いよね』


売店の品揃えはそれほど良くは無い。
Aは少し心配ではあったのだが、
優也が言っていたスポーツドリンクは、売店の冷蔵棚にちゃんと置かれていて。

その他、小さなお菓子などをいくつか買って、満足したようすで病室に向かうA。


しかし、その表情にはやはりふと、影が落ちて。

斉木の兄だというあの男の、アザと黒子──。
Aは、解消できるはずもない自分の葛藤を散らしてしまうかのように、
フルフルと頭を振って、大きな息を吐いた。


「あ、桜庭さん。おはようございます」


そして、廊下をすれ違った人物に声をかけられ、
ハッと顔を上げたA。



『え…、あ。先生…。おはようございます』

「ちょうど良かった。少し、お話出来ますか?」



それは、優也の主治医の医師だった。

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設定タグ:名探偵コナン , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます。ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした... (2022年9月5日 19時) (レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 萩原の姉は千速です。千早ではありません。 (2022年9月3日 0時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 萌仁香さん» 作品をお読み頂きありがとうございます。更新を楽しみにして頂けているなんて,感激しております...!長くなっておりますがストーリーはクライマックスに近づいておりますので,引き続きお楽しみ頂けますと幸いです。 (2022年7月19日 15時) (レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
萌仁香 - いつも更新楽しみにしています!だんだんストーリーが進んできてハラハラしています。警察学校組との絡み、特に松田さんや萩原さんと会話が好きで、引き込まれそうになりながら読んでいます! (2022年7月18日 20時) (レス) id: 57204f8190 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2022年7月14日 16時

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