蒼にダイブ_8 ページ8
Aは、大きく表情を緩めて、
口元に手を当ててクスクスと笑っていて。
降谷と松田は、ただ茫然とその姿を見つめていた。
首席で入校し、
いかにも優等生にも見えるのに、
“また他にこっそり忍び込める場所を”、などと言う降谷の姿が可笑しくて。
その優等生は、
諸伏を囮にするようにして、すぐさまこの状況から逃れるように先導した人物で。
なんとなく、そのちぐはぐな印象が可笑しくて。
それに、怖さを克服したわけではないものの、
空の蒼に包まれるように、
そこに飛び込むようにふわりと浮いた感覚と、
松田に強く抱きしめられながら、
その身体にしがみつきながら、落ちていく不思議な感覚。
降谷と松田の軽い言い合いのような雰囲気にも呑まれて、
Aは、ずいぶんと楽しそうに笑い声を溢していた。
「…怖かったって言ってなかった、か…？」
「タバコだとか、松田が変なこと言うからじゃないのか？」
ちらりと顔を見合わせて、首を傾げる2人。
しかし、どうにも楽しげな笑みを浮かべていて。
それもそのはずだ。
Aが声を出して笑うところなど、初めて見たのだから。
先日の夜のことを考えれば、
それは、2人にとって色々と思うところがあるもので。
『す、すみません…。
なんだか、ちょっと…、可笑しくて』
口元を覆って、目を細め、未だ楽しそうなA。
「へぇ？もう一回飛び降りてみてぇとかそういう話か？」
『え…、あ…、そ、それは──』
「遊びじゃないぞ、松田」
松田の言葉に少し戸惑うAの目の前で、
降谷が彼を諭すようにピシリと注意を溢した。
少し遠ざかった頭上の空には、やはり澄み切った蒼が広がっていて。
一瞬。
そこにダイブしたかのような不思議な感覚。
それは、
4階という高さから飛び降りた恐怖心と、
教官に見つかりそうになったというスリルと、
降谷という男のどこかちぐはぐな印象と、
松田のぶっきらぼうな問題児のような発言と、
力強く抱きしめられた感覚と──、
そんな様々な事柄と混ざり合って、
少し怖くて、
でも、
なんとなく不思議でなんとなく可笑しくて、
なんとなく気恥ずかしいような出来事として、
Aの記憶に刻まれたのだった。
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white12(プロフ) - さゆりさん» 本作をお読み頂き，コメントまで頂きありがとうございます。作品を好きだと言って頂き，本当に嬉しいです。お騒がせしてしまい申し訳ありません。作品を楽しんで下さっている方が1人でもいらっしゃることに，感謝しかありません。引き続きお楽しみ頂ければ嬉しいです。 (2022年7月5日 12時) (
レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
さゆり(プロフ) - 続編おめでとうございます！更新をいつも楽しみにしています。何だか大変だったみたいですが...。色々な方もいると思いますが、とても好きな作品なので、これからも応援しています！ (2022年7月4日 22時) (レス) id: 2b8084ecea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2022年7月3日 18時
