声を聞くのは_6 ページ28
「──けどな」
『…え』
「勘ってヤツも、警察官にとって重要視すべきことの1つらしいぜ」
『…』
「鬼公が言ってやがったし、アンタも講義で習ったんじゃねぇのか？」
ふっと、Aを見つめて問いかけた松田。
彼女を否定したいのか肯定したいのか、いまいち読めない表情で。
『…そうかも、しれませんけど。
でも、私はそもそも警察官じゃありませんし、
それに、そういう勘っていうのは、
様々な事件に関わって長年積み重ねてきた経験に基づくもの、…でしょう？』
「まぁ…、確かにな」
『似ていたと言っても…、あの日見たものと同じかは…、分かりませんし。
そもそも、手首辺りにアザや黒子がある人は、沢山いるはずで…』
つい今し方口にした自分の考えは、
ただの思い込みで、”確証の低い目撃証言”のようなものだと告白しているようなA。
キュッと強く握り締められた右手は、わずかに震えていて。
それでも…と、彼女の中で渦巻く葛藤の大きさを物語っていた。
「でも、そのぶつかったって男の背格好も、そのアザってヤツも、
事件があった日の…現場の様子も、アンタが一番良く、知ってるんだろ」
『…』
「アンタがそうかもしれねぇって思うのは、
もしかすっと、ただの思い込みだけってことじゃねぇかもしれねぇ…しな。
まぁ、アンタが思ってるみてぇに、突っ走った危ねぇ考えかもしれねぇけど」
松田の言葉が思考と身体にじんわりと染みていくような、
そんな感覚を覚えて、Aはいつのまにか噛み締めていた唇からふと力を抜いて、
深い息を漏らした。
『松田さんは、…”警察は、被害者の声を聞かずに犯人だけ追っていればいい訳じゃない”って、
そんな風に言っていましたよね』
「あ、あぁ。そういや言ったな」
『私はまだ警察官じゃない、ですけど…」
ふと、一瞬押し黙ったA。
そうして、
『声が、…聞こえる気がするんです』
「声？」
両手の指を軽く組むようにして、小さな声で口にした。
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white12(プロフ) - さゆりさん» 本作をお読み頂き，コメントまで頂きありがとうございます。作品を好きだと言って頂き，本当に嬉しいです。お騒がせしてしまい申し訳ありません。作品を楽しんで下さっている方が1人でもいらっしゃることに，感謝しかありません。引き続きお楽しみ頂ければ嬉しいです。 (2022年7月5日 12時) (
レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
さゆり(プロフ) - 続編おめでとうございます！更新をいつも楽しみにしています。何だか大変だったみたいですが...。色々な方もいると思いますが、とても好きな作品なので、これからも応援しています！ (2022年7月4日 22時) (レス) id: 2b8084ecea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2022年7月3日 18時
