秋夜の静けさと虫の声_7 ページ31
「その場に、いたんだけど...とっさに、隠れて。
何も、...出来なかった。
随分長い間、未解決で…、でも、犯人は…、少し前に捕まって。
ゼロ──、あ、…降谷とか、松田とか。みんなの、おかげ…なんだけど」
『…』
「…気持ちが分かるとか、だから心配なんだとか、そんなこと言いたいわけじゃないんだ。
そうじゃ、ない」
迷っているように、大きく目を逸らして宙を見つめながらそう呟く諸伏。
小さい頃に両親を──。
その場にいたけど何も出来なかった。
犯人は少し前に捕まって。
その言葉だけで、彼が何年もの間どんな思いを抱えていたのか、どんな恐怖に耐えてきたのか、
そんなことを考えそうになって、
Aは、頭の中だけではなく、腹の底、胸のあたりに言葉にすることは叶わない様々な感情が溢れてきて、
その波を上手く制御できなくて、
ただ、眉をぎゅっと寄せて右手を握りしめていた。
「…ごめん。
こんなこと、やっぱりあからさまな…同情だよな。
でも、…ほっとけないよ」
謝罪を交えながら、
ゆっくりと視線を戻してきた諸伏は、
何も言わずともその表情だけで十分なほど、心底心配そうな顔をしていて。
Aは、身体中を駆け巡る感情の波がさらに大きくうねり始めるのを感じて、
強く奥歯を噛み締めた。
『…大丈夫、ですから』
「…」
『気分が悪くなってしまったのは…、
本当に、少し、疲れていただけ、だと…、思います…』
そう言ったAは、
うねる感情に押し出されたような滴で、瞳をうっすら潤ませていた。
そうして、
ガラリ。
「お、やっぱここにいたのか」
ドアが少し乱暴に開いた音がしたと思ったら、
耳に入ってきた聞き慣れた声に、後ろを振り向く諸伏。
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white12(プロフ) - おと。さん» 嬉しいコメントをありがとうございます。作品をお読み頂けているだけでもありがたいのにそんな風に言って頂けてとても嬉しいです。本作はほぼ書き上げているので肉付けしつつの更新になりますが,今後もぜひお楽しみ頂ければ幸いです。 (2022年7月2日 14時) (レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - はゆさん» 本作をお読み頂きありがとうございます。作品が大好きと言って頂き,本当に嬉しく思います。描写など,回りくどい表現もあるかもしれませんが,楽しくお読み頂いていて嬉しいです。諸伏は私もけっこうお気に入りです☆今後もお楽しみ頂ければ幸いです。 (2022年7月2日 14時) (レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
おと。 - タイトルがお話のあらすじ(?)みたいになっていて、とても好きです!描写も丁寧で分かりやすくて、大好きな作品です!頑張ってください!! (2022年7月1日 21時) (レス) @page14 id: e5cb42b723 (このIDを非表示/違反報告)
はゆ(プロフ) - はじめまして!主さんの描く描写や登場人物の繊細な心情が心惹かれいつも更新を楽しみにしてます。普段あまりコメントを残すことはないのですが、この小説が大好きなため書かせていただきました。特に諸伏くんの絡みが好きです。更新頑張ってください!! (2022年7月1日 19時) (レス) id: 064bc96d3c (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 瑠夏さん» とても嬉しいコメントを頂きありがとうございます。楽しく読んでくださっているとのこと,私もとても励みになります。ありがとうございます。今後もお楽しみ頂ければ幸いです。 (2022年6月29日 19時) (レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2022年6月24日 16時