雨空に桜色の花びらを (3) 【名探偵コナン/警察学校組】

絡み合う視線と機械音_3 ページ3

──萩原と別れた後。



松田は、とある場所でぼんやりと一点を見つめていた。
白で包まれた空間。
その中に掲げられた1枚のプレートには、“桜庭 優也”と書かれていた。


それは、少し前に1度だけ見たものと何も変わっていなかった。





10分ほど前。
萩原の肩越しに見えたのは、Aの姿だった。


すぐに路地に入ってしまい、その姿は途中で見失ってしまったのだが、
彼女が歩いていたのは、警察病院に向かう道と同じ方角で。


なんとなく、ここかと思ったのだ。




なぜ、反射的に追いかけてしまったのか。
なぜ、ここに来てしまったのか。


上手くは説明出来る自信はなかったものの、
特に躊躇いがあるわけじゃない。



ただ、あの日のように、
中から声が聞こえるわけではなく、
ノックをして入るわけにもいかず、松田は小さくため息をついた。



「桜庭さんの、お知り合いの方ですか？」


首を傾げるようにして声をかけてきたのは、1人の看護師。



「あ、…いや――」



あの日と似た状況に、
少しの気まずさを交えてその場を離れようとした松田。


そして、



『――…え…、松田…さん？』



横から聞こえてきた声に、パッと振り向いた。
声の主は、驚いた表情のAだった。





「あ、やっぱりお知り合いだったんですね」


などと言って離れていく看護師に軽く会釈をするAに、
少々気まずそうに眉を寄せる松田。


『あの、どうしてここに？』


「いや、なんつーか...」



なんとなく視線を逸らしつつそう問いかけたAは、
こちらをちらりと見つめながら歩いていく看護師に気づいて少し困った顔で会釈をした。

そうして、
思考を整理するように伏せ目がちに小さく息を吐き出した後、


『...とりあえず、中に、...入りますか？』


と、松田に促した。

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